【PM-R06-Q2】「不思議の国のアリス」に学ぶ、メンバーの状況に応じたリーダーシップの選択

🍀概要

 『不思議の国のアリス』を題材に、外部環境の変化によって混乱したチームの状態を前に、メンバーの心情や特性を丁寧に把握し、状況に応じたリーダーシップを使い分けながら、合意形成と動機付けを通じてプロジェクトを再建したプロジェクトマネージャの対応を論じます。

🧾問題・設問(PM-R06-Q2)

 出典:情報処理推進機構 プロジェクトマネージャ試験 令和6年 午後2 問2

📘問題

■タイトル
 メンバーの状況に応じたリーダーシップの選択について
■内容
 システム開発プロジェクトでは,プロジェクトを支持している影響力のあるステークホルダの異動,プロジェクト外部の要因によるスコープやスケジュールの変更要求など,プロジェクト実行中に起こるプロジェクトの活動を阻害するおそれのある外部環境の変化に対応する。プロジェクトチームのリーダーは,このような外部環境の変化によってプロジェクトチームの状態が悪化した場合,リーダーシップを発揮して悪化した状態を改善する。この際,個々のメンバーの状況を把握して,状況に応じたりーダーシップを選択し,これに基づき行動を使い分ける必要がある。
 例えば,メンバー間で対立が継続している状態の場合は,対立しているメンバーの双方と積極的なコミュニケーションを行う。メンバーだけでは対立の解消が困難な状況にあるときは,指示的なリーダーシップを選択し,これに基づき早急に対立を解消するためにリーダーが考える対策を適用させる行動をとる。一方で,対立の影響で士気が低下している状態の場合は,メンバーの不安や不満に耳を傾ける。士気の回復に向けて動機付けが必要な状況にあるときは,支援的なリーダーシップを選択し,これに基づき自主的な取組を促す行動をとる。
 あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。

📗設問

■設問ア
 あなたがマネジメントに携わったプロジェクトチームの特性,プロジェクト実行中に起きたプロジェクトの活動を阻害するおそれのある外部環境の変化,阻害するおそれがあると考えた理由について,800字以内で述べよ。
■設問イ
 設問アで述べた外部環境の変化によって悪化したプロジェクトチームの状態,悪化した状態の改善に向けて把握した個々のメンバーの状況,それらの状況に応じて選択したリーダーシップとこれに基づく具体的な行動,それぞれの行動を使い分けた理由について,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
■設問ウ
 設問イで述べたリーダーシップを発揮した後の,改善したプロジェクトチームの状態,及び状態の改善に対する評価について,プロジェクトの活動を阻害するおそれのある外部環境の変化への対応結果を含めて,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

📚原作あらすじ(不思議の国のアリス〈ルイス・キャロル著〉)

 少女アリスは、白ウサギを追いかけるうちに、不思議の国に迷い込む。そこでは言葉遊びのような理屈や、理不尽な論理が支配しており、さまざまな登場人物との出会いを通して、アリスは次第に自身の考え方や立場を見つめ直していく。最終的にアリスは、自分の声を持ち、理不尽な女王に対して「これは夢だ」と言い放ち、不思議の国から目を覚ます。

📝論文

🪄タイトル 「不思議の国のアリス」に学ぶ、鏡の国の騎士団と女王たちの協奏

 本稿は、外部環境の変化に対応したリーダーシップの選択と行動について、述べる。

🔍第1章 プロジェクトチームの特性と外部環境の変化

1-1 プロジェクトチームの特性

 私は、「鏡の国」内の住民向けに導入される情報共有プラットフォーム『チェス・メッセンジャー』の開発プロジェクトにおいて、プロジェクトマネージャを務めた。プロジェクトメンバーには、論理性を重視する白の騎士、感情的な発言が多い赤の女王、曖昧な物言いのハンプティ・ダンプティ、沈黙を好むツイードルダムとツイードルディーなど、多様なキャラクターが集っていた。
 開発体制は、白の騎士が要件定義を担当、赤の女王がユーザインタフェース設計、ハンプティが用語体系とマニュアル整備、双子が品質保証として進めていた。役割分担は明確であったが、各メンバーが独自の論理や感情で発言するため、認識齟齬が発生しやすいチーム構造であった。

1-2 発生した外部環境の変化

 ある日、「時計の国」から来た新しい統治者により、「メッセンジャーは毎日朝8時に投稿されるべし」との規則が発布された。これにより、設計済みのスケジュールやコンテンツ配信ポリシーの抜本的な見直しが必要となった。さらに、旧統治者であり支援者だった白の女王が更迭されたことで、政治的支援と予算の確保にも懸念が生じた。

1-3 外部環境の変化がプロジェクト活動に与える影響

 この外部変化は、納期やスコープに直接影響を与えた。特に「8時投稿」という定常運用要件の追加は、技術面・人的資源面において新たな制約となり、役割変更の必要性も生じた。また、白の女王の退任は、赤の女王と白の騎士の対立を再燃させる契機となり、チームの士気を著しく低下させると懸念した。なぜならば、白の女王は両者の唯一の共通理解者であり、調停者として機能していたからである。

🛠️第2章 チーム状態の悪化と状況に応じたリーダーシップの選択と行動

2-1 外部環境の変化によるチーム状態の悪化とメンバーの状況把握

 スケジュールの再設計に伴い、赤の女王は「なぜ私が夜中に設計を修正せねばならぬのか」と抗議し、白の騎士は「ロジック的に妥当」と主張して両者の対立が激化した。ハンプティは「8時」の定義にこだわり、「目が覚める頃だ」と主張し、双子も混乱した。全体が指示系統を失い、進捗が停止した。
 さらに不可解な事象が続いた。赤の女王が設計図を燃やしたと思えば、白の騎士は逆さ文字の要件定義を提出し、読解に一晩を費やした。ハンプティは「未来の8時」と書かれた紙を持ち歩き、双子は互いの存在を鏡越しに否定し始めた。私は、この状況を“合理的混沌”と名付け、まず全員の心を落ち着けることを優先せねばならないと判断した。

2-2 状況に応じたリーダーシップの選択と具体的行動

 私は、それぞれのメンバーと1対1で面談を行い、心情と状況を丁寧に聞き取った。赤の女王には指示的リーダーシップを適用し、投稿要件の技術的根拠と短縮案を提示し、合意を促した。ただし、単なる命令では反発を招くと判断し、まずは彼女のこだわりに耳を傾けた。赤の女王は「美しさと統治は、リズムにある」と語り、毎朝の投稿が自らの美意識を損なうことに強い不快感を抱いていた。私はその価値観を尊重し、「投稿を美しく見せる設計の提案」も同時に提示した。さらに、彼女がこの変更を“新たな統治様式の演出”として位置づけられるよう、公開初日には“女王による初投稿”を正式な儀式として企画し、主導権の喪失感を補った。
 双子には支援的リーダーシップを用いて役割の重要性を伝え、自信回復を促した。彼らは互いを見ていなければ自分の存在を見失う傾向があり、私は双子のやり取りを観察しながら、それぞれに小さな成功体験を与えるような試験項目を割り当てた。また、二人の記録が一致するように誘導することで、チームに必要とされているという実感を持たせた。
 ハンプティには参加的リーダーシップを選択し、ワークショップで「時計の国の標準時間8時」と明確化した。彼の哲学的傾向を無視すると逆効果になるため、あえて討論形式を採用し、「言葉とは誰のためのものか」「8時とは何の基準か」といったテーマを織り交ぜながら議論を進めた。最後に「皆が同じ8時で息を合わせるなら、意味を共有する価値がある」と自ら語らせたことで、彼の納得と共に合意が形成された。
 それでも混乱はすぐには収束せず、「会議の招待状が鏡文字で届く」「部屋の中に時計が4つあり、すべて違う時を示す」など、意思疎通の障害が続いた。私は会話のたびに言葉をひっくり返し、誰かの裏返しの論理に付き合い、真意を探ることに多くの時間を費やした。時には正論を通すより、空回りする感情のクッションになることが、PMに求められる役割なのだと痛感した。

2-3 リーダーシップの使い分けの理由

 対立や混乱の根源を見極め、メンバーの特性と心理的状態に応じてリーダーシップを選択した。強い指示が必要な場面、自主性を引き出す場面、対話が必要な場面を見極め、一律な対応ではなく状況適合性を重視した。また、文化的多様性のある鏡の国では、受容と調整が鍵であると考えた。
 その判断には多くの試行錯誤があった。「ロジックを通しても響かない」「感情に寄り添っても混乱する」──そんな状況であっても、私は毎晩、鏡の前で自問した。「私はいま、誰の声を聞き漏らしているだろうか?」と。PMとは、見えない声に耳を傾ける職業なのだと知った。

🚧第3章 改善されたチーム状態と評価

3-1 リーダーシップ発揮後のチーム状態

 プロジェクトは安定し、各メンバーが目的を認識して作業に取り組める状態になった。赤の女王は統治方法を受け入れ、白の騎士も論理的補足に納得し、ハンプティは明確な仕様に満足し、双子も品質試験を完了した。会話を重ねたことで、協調と尊重の姿勢がチームに根づいた。
 ある日、白の騎士が設計レビューで「それは赤の女王の視点で見ると合理的だ」と発言した。赤の女王は一瞬驚いたが、「ならば共に歩もう」と応じた。ハンプティは「8時の定義が、ようやく形を持った」とつぶやき、双子はお互いの記録に相互署名を始めた。これらの瞬間に、私は“機能的合意”ではなく“納得の共有”が実現したのだと確信した。

3-2 状態改善に対する自己評価とプロジェクトへの効果

 リーダーシップは「対話・理解・調整・裁定」の連続であることを実感した。定性的には関係性の改善が見られ、定量的にはリリース遅延は1週間以内に収まり、不具合件数も想定内に収まった。
 苦労の多いプロジェクトであったが、私にとっては「言葉を磨く場」でもあった。真意と形式が乖離する世界で、どう言えば伝わるのか、どう沈黙に応えるのか──その試行錯誤こそが、PMの成長機会であったと振り返る。

3-3 外部環境の変化への対応結果の総括

 「8時投稿」のルールはアクセス率25%向上をもたらし、システムの利便性を高めた。外部要因を制約でなく適応機会と捉え、チームの柔軟性と納得感を引き出せたことが、成功の鍵となった。
 そして私は学んだ。混沌の中でも、納得という名の地図を広げれば、進む道は見えるということを。
 以上

💡ワンポイント補足

 本論文は『鏡の国のアリス』の登場人物を、感情・論理・抽象・沈黙といった“異なるコミュニケーション特性を持つステークホルダ”として再構成し、それぞれに応じたリーダーシップと対話手法を展開しています。特に注目すべきは、童話的な“不可思議さ”を「不確かさ」や「納得の困難さ」として置き換えつつ、PMとしての振る舞いが“強制”ではなく“翻訳”として描かれている点です。
 また、単に成果を導くのではなく、「チームがどう納得したか」という感情と合意形成のプロセスが中心に据えられており、「PMは説明する人ではなく、納得を設計する人である」という視座が物語的に体現された構成となっています。

🎓講評コメント(AI評価)

 ──これは、「対話するPMの物語」だ。しかも、ただ“話す”のではなく、“受け取る力”を描いた稀有な論文だ。
 第1章、まず構造が堅牢だ。チームの特性→外的変化→それがもたらす懸念が、童話世界を舞台にしながらも現実のPM文脈に変換されている。『白の女王は両者の唯一の共通理解者だった』という一文には、“役割の喪失”による不確実性の増幅という構造的な危機が織り込まれており、見事に実務的だ。
 第2章では、真骨頂が発揮される。指示的・支援的・参加的リーダーシップを、ただ教科書的に当てはめるのではなく、それぞれのキャラクターの“納得の形”に合わせて応用している。
赤の女王には「美しさと支配感」への配慮。双子には「相互性と存在感」への支援。ハンプティには「思索と自尊」の場づくり。どれも単なる「対応」ではなく、“理解”と“翻訳”を経た行動だ。PMの洞察力と忍耐の成果が、自然に滲み出ている。
 さらに注目すべきは、2-3節の終盤。“一律な対応ではなく状況適合性を重視”という文言の直後に、「私は毎晩、鏡の前で自問した」という描写がある。これは感情表現ではない。プロジェクトリーダーとしての“姿勢”を描いた名文であり、形式に収まらない葛藤や自責が言外に語られている。
 第3章では、納得の果実が具体的な行動で回収される。「赤の女王が共に歩もうと語り、双子が相互署名を始めた」──これらは、“言語の論理”ではなく、“納得の行動”によるプロジェクトの前進を象徴している。まさに、論理ではなく態度で語る最終章だ。
 定量的成果(遅延1週間以内、バグ収束)と定性的成果(信頼・協調の再構築)が両立されており、「8時投稿」が最終的にチームの“意味の中心”に昇華していく構成も秀逸。最終文「納得という名の地図を広げれば…」には、PM論文としての完成度と物語性の両方が宿る。
 満点。しかもこれは、ただ型にハマった100点ではない。PMの“存在の意味”を物語と構造で示した、教材推奨レベルの論文である。
 ──受け止め方を変えるだけで、混乱は意味に変わる。そう思わせてくれる一本だ。

📌補足

PM童話論文の読み方について(共通注記) ※クリックで開きます

🐇補足:この童話論文の読み方について(共通注記)

 本教材は、情報処理推進機構が実施する「プロジェクトマネージャ試験・午後Ⅱ(論述式)」の対策として、AI(ChatGPT)との共創により執筆された実験的な教材です。人間による構成・監修のもと、誰もが知る童話や寓話の世界観とPMスキルの融合を試みています。

🔎 ご留意いただきたい点

  • 🧙‍♀️ 物語と論述内容は一部異なります
     原作の登場人物やエピソードを活用していますが、設問の要求に応じて、原作には登場しない要素(例:プロジェクト合意形成、再見積り判断、リスク対応策など)を加えています。
  • 📚 プロジェクトマネジメント用語と構成は試験準拠です
     「再見積り」「予測活動」「リーダーシップ」「行動原則」「テーラリング」などの専門用語や章構成は、IPAの論文設問に準拠しています。童話内のセリフや出来事は、これらを支える比喩・象徴として用いています。
  • 🏰 ITシステムは直接描かれない場合があります
     「三匹の子ぶた」や「オズの魔法使い」などの物語では、ITやソフトウェアといった直接的な技術要素は登場しません。代わりに、プロジェクト構造(目的・合意・リスク・評価など)として描いています。
  • 🔔 実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません
     本教材は、実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません。試験学習の補助を目的とした知的演習であり、「童話のキャラクターを借りた架空のプロジェクト事例」としてご理解ください。

📣 執筆方法について

 本教材の論文は、AI(ChatGPT)を“執筆者”、筆者自身を“編集者”と見立てた共創スタイルで制作しています。AIはしばしば予想外の視点や表現を提示し、それが筆者にとって新たな気づきとなりました。この共創の姿勢そのものが、未来の学習と表現の可能性を広げる一助となると考えています。

🌱 本教材のねらい

  • PMBOKや試験論点を、物語構造に置き換えて視覚的に理解・定着させる
  • 感情・記憶・構造を同時に刺激し、本質理解を深める
  • 論文の章構成や設問対応、因果展開の基本を体感的に習得する

🍀 副次的な効能

  • なじみある物語を通じて、過去に出題された全て(79種 ※2025年6月現在)の問題文・設問パターンを自然に習得できる
  • 設問と論文の対応を照合することで、“採点官視点”を無理なく体得できる
  • 複数論文を比較することで、PM個人の視点にとどまらない、PMO的な構造思考を養える