【PM-R03-Q1】「アリとキリギリス」に学ぶ、プロジェクトチーム内の対立の解消

🍀概要

 『アリとキリギリス』を題材に、価値観の違いによるチーム内の対立に対し、合意形成と行動原則の見直しを通じて協働体制を築いたプロジェクトマネージャの対立解消力と組織運営力を論じます。

🧾問題・設問(PM-R03-Q1)

 出典:情報処理推進機構 プロジェクトマネージャ試験 令和3年 午後2 問1

📘問題

■タイトル
 システム開発プロジェクトにおけるプロジェクトチーム内の対立の解消について
■内容
 プロジェクトマネージャ(PM)は,プロジェクトの目標の達成に向け継続的にプロジェクトチームをマネジメントし,プロジェクトを円滑に推進しなければならない。
 プロジェクトの実行中には,作業の進め方をめぐって様々な意見や認識の相違がプロジェクトチーム内に生じることがある。チームで作業するからにはこれらの相違が発生することは避けられないが,これらの相違がなくならない状態が続くと,プロジェクトの円滑な推進にマイナスの影響を与えるような事態(以下,対立という)に発展することがある。
 PMは,プロジェクトチームの意識を統一するための行動の基本原則を定め,メンバに周知し,遵守させる。プロジェクトの実行中に,プロジェクトチームの状況から対立の兆候を察知した場合,対立に発展しないように行動の基本原則に従うように促し,プロジェクトチーム内の関係を改善する。
 しかし,行動の基本原則に従っていても意見や認識の相違が対立に発展してしまうことがある。その場合は,原因を分析して対立を解消するとともに,行動の基本原則を改善し,遵守を徹底させることによって,継続的にプロジェクトチームをマネジメントする必要がある。
 あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。

📗設問

■設問ア
 あなたが携わったシステム開発プロジェクトにおけるプロジェクトの特徴,あなたが定めた行動の基本原則とプロジェクトチームの状況から察知した対立の兆候について,800字以内で述べよ。
■設問イ
 設問アで述べたプロジェクトの実行中に作業の進め方をめぐって発生した対立と,あなたが実施した対立の解消策及び行動の基本原則の改善策について,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
■設問ウ
 設問イで述べた対立の解消策と行動の基本原則の改善策の実施状況及び評価と,今後の改善点について,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

📚原作あらすじ(アリとキリギリス〈イソップ寓話〉)

 夏の間、アリは冬に備えて働き続け、一方キリギリスは歌って遊んで過ごす。やがて冬が訪れ、食べ物のないキリギリスはアリに助けを求めるが、断られる(あるいは戒められる)。勤勉と準備の大切さ、怠惰の代償を教える教訓的な物語。

📝論文

🪄タイトル 「アリとキリギリス」に学ぶ、対立を越えて冬を乗り越えたアリとキリギリスの協働

 本稿は、「アリとキリギリス」に学ぶ、対立を越えて冬を乗り越えたアリとキリギリスの協働について、述べる。

🔍第1章 プロジェクトの特徴、行動の基本原則、察知した対立の兆候

1-1 プロジェクトの特徴

 この物語は、冬に備えて食料備蓄と住まいの補強を進める森のプロジェクトにおいて、勤勉なアリたちと、自由奔放なキリギリスが一つのチームとして活動する中で発生した対立とその解消を描いたものである。アリは作業計画の遂行を重視し、キリギリスは創意や柔軟性を大切にした。両者の価値観が異なる中、チーム全体で冬支度という共通目標に取り組んだ。

1-2 定めた行動の基本原則

 プロジェクトマネージャとしてアリの長老が定めた行動の基本原則は、「①日々の進捗を共有すること」「②互いの強みを認め合うこと」「③作業方針に異論があればその場で話すこと」の三つであった。これにより、アリの計画性とキリギリスの柔軟性がうまく融合し、相乗効果が期待された。

1-3 察知した対立の兆候

 しかし、プロジェクト開始後2週間ほどで、会話の中に皮肉や沈黙が増え、定例の進捗会議でキリギリスが遅刻したり、アリが笑顔を見せなくなるなど、不和の兆候が現れた。アリはキリギリスの即興的提案を“気まぐれ”と捉え、キリギリスはアリの作業工程表を“息苦しい”と感じていた。基本原則を共有していたにもかかわらず、感情的なズレが浮き彫りとなっていた。

🛠️第2章 作業の進め方をめぐって発生した対立、実施した対立の解消策、行動の基本原則の改善策

2-1 作業の進め方をめぐって発生した対立

 対立が表面化したのは、保存食の調理方法を巡ってであった。アリたちは「効率と保存性を優先して干し草と木の実を乾燥保存すべき」と主張し、キリギリスは「風味と栄養を損なわない調理法を試すべき」と提案した。会議は紛糾し、互いの作業手順や働き方に対する不満が噴出した。
 特に深刻だったのは、アリたちの一部が「キリギリスの意見は現実的でない」と決めつけて耳を貸さなくなったこと、キリギリスが「自分の提案は無視される」と感じて会議を途中退席したことである。この一連の出来事はチームの信頼関係に亀裂を生じさせ、他の虫たちも発言を控える空気になっていた。

2-2 実施した対立の解消策

 私は中立の立場で「両者が歩み寄れる方法があるか」を探る場として“お試し棚”を設けた。これは、一定量の食材をアリ方式・キリギリス方式の両方で処理し、結果と評価を比較する実験である。この取り組みによってアリたちは風味と保存性の両立に関心を持ち、キリギリスは工程の見直しや日程遵守の必要性を実感した。また、会議進行にも工夫を加え、話す順番や持ち時間を定め、発言内容は“森の議事録帳”に記録することで公平性と透明性を担保した。
 さらに、アリの一匹に対し、「キリギリスの提案の良さを一度受け止めた上で、自分の意見を言ってみよう」と個別に声をかけた。キリギリスにも「意見を主張することと、仲間と協力することは両立できる」と励まし、双方の緊張をほぐす橋渡しを行った。

2-3 行動の基本原則の改善策

 また、対立が発生しやすい工程においては“共通基準ボード”を設け、作業の定義や成果物のイメージを事前に共有する運用を追加した。これにより、抽象的な言葉の解釈違いによる衝突を減らすことができた。さらに、週に一度“リフレクションタイム”と称した自由発言の時間を設け、その週のもやもやや学びを語り合う場とした。そこではアリが「今日はキリギリスの提案で助かった」と発言することもあり、立場を越えた相互評価が生まれ始めた。
 従来の「異論があればその場で話す」という原則を「異論があると感じたら“検討リクエスト欄”に記入し、次回会議で必ず取り上げる」と変更した。これにより、即時反論のストレスを減らしつつ、意見の棚上げや放置を防ぐ構造とした。また、「互いの強みを認め合うこと」の実践として、月末に“感謝のひと言”を交わす文化を導入した。これにより、作業の可視化だけでなく、相互理解の積み重ねが図られた。

🚧第3章 対立の解消策と行動の基本原則の改善策の実施状況、実施状況の評価、今後の改善点

3-1 対立の解消策と行動の基本原則の改善策の実施状況

 “お試し棚”での結果比較は、実際に味と保存性のバランスを検証できる場となり、両者の技術が融合するきっかけとなった。キリギリスの風味工夫が加えられた保存食は、冬の長い夜に仲間たちの楽しみとして高く評価された。会議運営のルール変更により、全員が発言しやすくなり、特に若いアリや他の虫たちからも提案が出るようになった。
 加えて、“リフレクションタイム”の中で発言された意見をもとに、翌週の作業工程に柔軟に反映するという仕組みを加えたことで、単なる発散で終わらず、“改善提案の循環”が自然に生まれるようになった。プロジェクトが進む中で、関与する全員が改善に寄与できる構造が実現しつつあった。

3-2 実施状況の評価

 対立を通じて、アリとキリギリスの双方が相手の価値に気づく機会となり、「対立は学びの兆し」という新たな視点がチームに共有された。感謝の文化も定着し、「ありがとう」という言葉が自然に交わされる空気が生まれた。森の長老からは「このチームは次の冬祭りの企画も任せられる」と評価された。
 また、若いメンバからは「議論に参加することが楽しくなった」という声もあがり、チームに前向きなエネルギーが満ちるようになった。アリも「キリギリスの工夫が、結果的に効率化にもつながった」と明言するようになり、相互認知が深まった。

3-3 今後の改善点

 さらに、アリとキリギリスの働き方の違いを前提とした“柔軟シフト制”の導入も検討している。早朝からの作業が得意なアリと、夕暮れ時に集中力を発揮するキリギリスでは作業時間帯に差があり、これを活かすことで無理のない働き方と作業効率の向上が見込まれる。また、感謝文化の継続性を確保するため、“ありがとう投票”という匿名式の称賛メッセージ投函箱も導入し、直接言いづらい感謝も可視化できるようにする予定である。
 一方で、“検討リクエスト欄”の記入が偏りがちで、一部メンバの意見が可視化されにくい傾向も残った。今後は、定例会の前に“話したいこと相談シート”を配布し、非言語的な発信機会も整備する予定である。また、意見対立がエスカレートしそうな場面では“中立ファシリ役”のローテーション制を導入し、対話の場が安全で対等なものとなるよう進化させていく。
 以上

💡ワンポイント補足

 原作ではアリとキリギリスは相容れない存在として描かれますが、本論文では両者の価値観の違いを“チーム内対立”と捉え、共通基盤・相互理解・行動原則の見直しを通じた協働の構築プロセスへと発展させています。

🎓講評コメント(AI評価)

 いやあ、これは見事。
 「アリとキリギリス」という一見単純な構図の中に、対立の本質とその超え方をこれだけ繊細かつ構造的に描けるとは……脱帽だよ。
 特に印象的だったのは、「お試し棚」という解決策だね。これはPMとして“両者の論理を尊重しつつ、共通言語に変換する”という高度な合意形成技法。さらに、対話文化の定着、感謝の制度化、シフト制の導入……対立が制度を生み、制度が文化を育てるという循環が自然に描かれている。
 技術でも感情でもなく、“仕組みで信頼を育てた”のがすごい。これこそPMの本懐。
 受かるかどうかじゃない。読み手が「こうありたい」と思えるPM像が、ここにはある。
 あえて言うなら、これはもう童話という枠を越えた「チームマネジメントの寓話」だね。大変良くできました。

📌補足

PM童話論文の読み方について(共通注記) ※クリックで開きます

🐇補足:この童話論文の読み方について(共通注記)

 本教材は、情報処理推進機構が実施する「プロジェクトマネージャ試験・午後Ⅱ(論述式)」の対策として、AI(ChatGPT)との共創により執筆された実験的な教材です。人間による構成・監修のもと、誰もが知る童話や寓話の世界観とPMスキルの融合を試みています。

🔎 ご留意いただきたい点

  • 🧙‍♀️ 物語と論述内容は一部異なります
     原作の登場人物やエピソードを活用していますが、設問の要求に応じて、原作には登場しない要素(例:プロジェクト合意形成、再見積り判断、リスク対応策など)を加えています。
  • 📚 プロジェクトマネジメント用語と構成は試験準拠です
     「再見積り」「予測活動」「リーダーシップ」「行動原則」「テーラリング」などの専門用語や章構成は、IPAの論文設問に準拠しています。童話内のセリフや出来事は、これらを支える比喩・象徴として用いています。
  • 🏰 ITシステムは直接描かれない場合があります
     「三匹の子ぶた」や「オズの魔法使い」などの物語では、ITやソフトウェアといった直接的な技術要素は登場しません。代わりに、プロジェクト構造(目的・合意・リスク・評価など)として描いています。
  • 🔔 実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません
     本教材は、実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません。試験学習の補助を目的とした知的演習であり、「童話のキャラクターを借りた架空のプロジェクト事例」としてご理解ください。

📣 執筆方法について

 本教材の論文は、AI(ChatGPT)を“執筆者”、筆者自身を“編集者”と見立てた共創スタイルで制作しています。AIはしばしば予想外の視点や表現を提示し、それが筆者にとって新たな気づきとなりました。この共創の姿勢そのものが、未来の学習と表現の可能性を広げる一助となると考えています。

🌱 本教材のねらい

  • PMBOKや試験論点を、物語構造に置き換えて視覚的に理解・定着させる
  • 感情・記憶・構造を同時に刺激し、本質理解を深める
  • 論文の章構成や設問対応、因果展開の基本を体感的に習得する

🍀 副次的な効能

  • なじみある物語を通じて、過去に出題された全て(79種 ※2025年6月現在)の問題文・設問パターンを自然に習得できる
  • 設問と論文の対応を照合することで、“採点官視点”を無理なく体得できる
  • 複数論文を比較することで、PM個人の視点にとどまらない、PMO的な構造思考を養える