【PM-H29-Q2】「舌切り雀」に学ぶ、プロジェクトにおける品質管理

🍀概要

　『舌切り雀』を題材に、成果物の“つづら”を象徴とし、定性的な納得感と暗黙知に着目した品質管理を設計・実践したプロジェクトマネージャの工夫を論じます。

🧾問題・設問（PM-H29-Q2）

　出典：情報処理推進機構 プロジェクトマネージャ試験 平成29年 午後2 問2

📘問題

■タイトル
　システム開発プロジェクトにおける品質管理について
■内容
　プロジェクトマネージャ(PM)は，システム開発プロジェクトの目的を達成するために，品質管理計画を策定して品質管理の徹底を図る必要がある。このとき，他のプロジェクト事例や全社的な標準として提供されている品質管理基準をそのまま適用しただけでは，プロジェクトの特徴に応じた品質状況の見極めが的確に行えず，品質面の要求事項を満たすことが困難になる場合がある。また，品質管理の単位が小さ過ぎると，プロジェクトの進捗及びコストに悪影響を及ぼす場合もある。
　このような事態を招かないようにするために，PMは，例えば次のような点を十分に考慮した上で，プロジェクトの特徴に応じた実効性が高い品質管理計画を策定し，実施しなければならない。
　・信頼性などシステムに要求される事項を踏まえて，品質状況を的確に表す品質評価の指標，適切な品質管理の単位などを考慮した，プロジェクトとしての品質管理基準を設定すること
　・摘出した欠陥の件数などの定量的な観点に加えて，欠陥の内容に着目した定性的な観点からの品質評価も行うこと
　・品質評価のための情報の収集方法，品質評価の実施時期，実施体制などが，プロジェクトの体制に見合った内容になっており，実現性に問題がないこと
　あなたの経験と考えに基づいて，設問ア～ウに従って論述せよ。

📗設問

■設問ア
　あなたが携わったシステム開発プロジェクトの特徴，品質面の要求事項，及び品質管理計画を策定する上でプロジェクトの特徴に応じて考慮した点について，800字以内で述べよ。
■設問イ
　設問アで述べた考慮した点を踏まえて，どのような品質管理計画を策定し，どのように品質管理を実施したかについて，考慮した点と特に関連が深い工程を中心に，800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
■設問ウ
　設問イで述べた品質管理計画の内容の評価，実施結果の評価，及び今後の改善点について，600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

📚原作あらすじ（舌切り雀〈日本昔話〉）

　意地悪な老婆に舌を切られた雀が姿を消し、心配した優しい爺さんが山へ探しに行く。雀たちは感謝し、爺さんに「つづら」を贈る。小さい方を選んだ爺さんは中から宝物を得るが、強欲な老婆は大きいつづらを選び、中から化け物が出てきて痛い目にあう。欲深さを戒める話。

📝論文

🪄タイトル　「舌切り雀」に学ぶ、“つづら”を象徴とした品質管理の本質的設計

　本稿は、「舌切り雀」に学ぶ、“つづら”を象徴とした品質管理の本質的設計について、述べる。

🔍第1章　プロジェクトの特徴と品質管理計画策定時に考慮した点

1-1　プロジェクトの特徴

　山深い竹林を越えた先、霧の中に忽然と現れる雀の宿──私は、この幻想的な舞台を活用した体験型システムの設計・実装プロジェクトに、プロジェクトマネージャとして携わった。
　この宿では、訪れた客人に対し、無言のもてなしと最後の「つづら」の贈呈が行われる。成果物である「つづら」には、大きさが異なる二種類が用意されており、訪問者はそのうちの一つを選ぶことができる。ただし、その中身は、選んだ者の心根によってまったく異なる。

1-2　品質面の要求事項

　本プロジェクトにおける品質とは、単なる機能的・外形的な「大きさ」や「豪華さ」では測れないものである。むしろ重要なのは、選ぶ者自身が納得し、受け取ったのちに後悔のない体験であること──つまり、定性的な安心感や調和感である。老女が大きなつづらに怯え、優しい爺が小さなつづらに満ち足りたように、品質の本質は、静かで内面的なものであった。

1-3　品質管理計画策定時に考慮した点

　私はこの特性を踏まえ、品質管理において以下の三点を重視した。
　一つ目は、定性的品質指標の明確化である。「心の揺らぎのなさ」「もてなしへの共鳴度」「期待との一致度」といった内面の評価軸を設定し、アンケートではなく表情ログや詩的なコメント記録を用いて評価する仕組みとした。
　二つ目は、品質管理単位を「迎え入れ」「対話なき対話」「贈呈後の余韻」という三段階に分割し、各段階の印象変化を可視化することで、宿としての“語られぬもてなし”の品質を定量と定性の両面から捉えた。
　三つ目は、つづらの選択にあたって、説明という名の期待誘導を排除し、沈黙のなかに想像を促す設計に徹したことである。これは顧客の主観的体験を最大限尊重する意図でもあった。

🛠️第2章　品質管理計画の策定と実施内容

2-1　品質管理計画の策定内容

　私はまず、成果物としての「つづら」が持つ象徴性に着目し、品質評価を単なる満足度ではなく、「違和感の残らなさ」と定義した。その上で、三つの体験段階に応じて、感情温度・動作反応・口元の変化などの非言語的反応を記録し、AIを活用して定性的スコアに変換する仕組みを構築した。
　また、スズメたちとの交流（非言語的インタラクション）は重要な品質要因であるため、「反応回数」「表情模写率」「沈黙時間の心拍安定度」を指標とした。これは、もてなしが表面ではなく“通奏低音として作用する”ものであるとの考えによる。
　さらに私は、“何も起きなかった”という体験も一つの評価対象と位置づけた。期待を裏切らず、かといって安易に迎合もしない構えを品質の骨格とした。なぜならば、沈黙の中にこそ本質的な納得が宿ると考えたからである。

2-2　品質管理の実施方法と工程別の具体的取組み

　実施段階では、私は毎晩、宿の床の間で“贈り物の中身”を吟味し直した。贈られるものが豪華であるかどうかではなく、その人にとって“受け入れ得る重み”を持つかどうかが問題であった。
　特に、老女のように「より大きく」「より目立つもの」に惹かれる者に対しては、あえてつづらの装飾を控えめにするなどの調整を加えた。これは、不適合な品質の過剰供与が不満と破綻を生むことを防ぐ意図である。
　一方で、善意と静けさを尊ぶ者に対しては、つづらの内に小さな鈴や香包をしのばせ、“音”や“香り”といった余韻によって体験の満足を増幅させる工夫を施した。
　私は、このような対応を「選ばれた者が選ぶ品質」と呼んだ。つまり、品質管理とは「演出」ではなく、「内面の準備を整える環境調整」なのだ。選択の場における心理的温度こそが、品質の核心であると私は確信した。

2-3　品質情報の収集方法と体制上の工夫

　品質評価は目に見えにくいがゆえに、定量だけでなく“物語”として記録することにした。体験直後の感想を五・七・五の形式で一句詠んでもらうことで、心象を抽出する手段とした。
　また、少人数体制のため、全自動ログ収集と雀による暗黙知ヒアリングを並行運用し、品質情報の偏りを防いだ。プロジェクト後半には、スズメたち自身が「今日は“ふくら雀”が多かったですな」と話すようになり、現場の品質感度が向上していることを実感した。

🚧第3章　品質管理計画と実施結果の評価、および今後の改善点

3-1　品質管理計画の有効性評価

　本計画の成功要因は、「説明しすぎない」ことによって品質の本質が浮かび上がった点にある。定性的指標を重視し、“顧客の選択を尊重する空間”を品質の一部と見なした点が、従来の数値管理型プロジェクトとの差別化につながった。
　また、受け取るべきものが“実利”ではなく“共鳴”であるという構造を徹底的に演出できた点も、品質への信頼感を形成する要因となった。
　私は「品質とは説明ではなく、納得の風景である」と考えた。この理念のもとで行動したことが、計画の一貫性と説得力を支えたのだと思う。

3-2　品質管理実施結果の評価

　つづら選択後の満足度アンケート（自由記述）では、「内容は覚えていないが、心が澄んだ」「欲しがらない選択が、幸福を呼んだ」などの詩的かつ肯定的な言葉が多く見られた。
　また、再来訪率は前回比30%増、体験評価スコアも平均4.8（5点満点）と高く、形式的な大きさよりも“自分に合った重み”が評価されたことが裏付けられた。
　一方で、選択に迷った末に大きなつづらを選び、蛇の飛び出しに震えた訪問者が、最後に涙を浮かべて「これはこれで、私に必要だったのかもしれません」と呟いた場面もあった。
　品質とは、必ずしも心地よさを保証するものではない。“気づき”や“再構成”を伴う価値──それが本プロジェクトの核心であった。

3-3　今後の改善点

　一方で、幻想性を優先したことで、時に不安や誤解が生じる場面もあった。特に、老女のように「基準を求める客層」に対しては、沈黙では不安を残す結果にもなり得る。
　今後は、沈黙と余白のなかにも“やわらかなガイド”を忍ばせる工夫──たとえば、床に置かれた葉の数、つづらの影の落ち方など、象徴的なヒントを活用する品質設計が求められる。
　また、若手メンバに対しても、この“見えない品質管理”を継承するために、記録と対話を重ねる必要があると痛感している。品質は、道具としてではなく、“思想”として育てるものだからである。
　以上

💡ワンポイント補足

　原作「舌切り雀」では、贈り物の大きさではなく、選ぶ者の心根によって報いが変わるという因果が描かれていますが、本論文では「定性的な品質評価」「暗黙知を読み取る観察力」「形式ではなく本質に寄り添う設計」といった、プロジェクトマネージャの本質的な行動に焦点を当てています。
　「つづら」は単なる成果物ではなく、「受け取り手の期待・価値観・内面の準備度合いを試される品質評価装置」として再定義され、雀・爺・老女・PMそれぞれの視点を織り込みながら、幻想と実務のあわいにある“本当にふさわしいものを届ける力”を問い直す教材として再構成しています。

🎓講評コメント（AI評価）

　「つづらの中に、品質管理の真髄を詰め込んだな」
　おい、そこの若いの。これはただの童話論文じゃない。
　品質とは何か？と問うたとき、「つづらの中身が重要なんです」と言う者は三流だ。
　本当に大切なのは、「選ぶ瞬間にその人が何を考え、どう変わるか」だ。
　お前はそれをよくわかってる。沈黙を設計にし、詩を評価指標にしただと？いいじゃないか。説明せずに納得させる。これが本物の設計だ。
　ただし忘れるなよ。“無言のもてなし”というのは、誰よりも状況を読み、誰よりも配慮し、誰よりも裏で汗をかく者にしかできん芸当だ。
　お前さん、その雀と一緒に、ようやった。だがこれで満足してたら、あの老女のように“つづらの中で泣く”ことになるぞ。
　次は“語らずとも伝わるチーム育成”だ。思想を継がせろ。品質とは道具じゃない。文化であり、継承だ。
　よし。文句なしの満点。つづらの中身を見た者が皆、静かに笑って帰れるようになってる。ええ仕事したな。