【PM-H17-1-PM2-Q3】「三匹のくま」に学ぶ、プロジェクト遂行中のチームの再編成

🍀概要

 『三匹のくま』を題材に、適材適所の判断を比喩として活かし、スキルや進捗のばらつきが生んだ品質不良に対し、チームの再編成によって役割と連携を最適化し、全体の成果とモチベーションを立て直したプロジェクトマネージャの対応を論じます。

🧾問題・設問(PM-H17-Q3)

 出典:情報処理推進機構 プロジェクトマネージャ試験 平成17年 午後2 問3

📘問題

■タイトル
 プロジェクト遂行中のチームの再編成について
■内容
 情報システム開発プロジェクトの遂行中に,進捗の遅れ,成果物の品質不良や要員間のトラブルなどの問題が発生することがある。これらの問題は,要員スキルの見込み違い,予測していなかった作業の発生,プロジェクト内のコミュニケーションの不足などが複雑に絡み合って起きることが多い。
 このような場合,プロジェクトマネージャは,問題の原因を分析し,その結果を基に,チームを再編成して問題に対処することがある。チームの再編成には,チーム間の要員の配置換え,チームリーダの交代,チーム構成の変更などがある。チームの再編成はプロジェクト遂行に影響を与えるので,慎重に取り組む必要がある。このため,プロジェクトマネージャは,関係するチームリーダや要員に再編成の目的を十分に説明して理解を得ておかなければならない。
 さらに,チームの再編成後には,チームリーダからの報告や要員の作業状況などから問題の改善状況を把握することによって,チームの再編成による効果を確認し,プロジェクトの納期,品質,予算の見通しを得ることが重要である。
 あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。

📗設問

■設問ア
 あなたが携わったプロジェクトの概要と,チームの再編成によって対処した問題を,800字以内で述べよ。
■設問イ
 設問アで述べた問題に対処するために,あなたはチームの再編成をどのように行ったか。再編成するのが適切であると考えた理由とともに具体的に述べよ。また,チームの再編成による効果をどのように確認したかを,具体的に述べよ。
■設問ウ
 設問イで述べたチームの再編成について,あなたはどのように評価しているか。今後改善したい点とともに簡潔に述べよ。

📚原作あらすじ(三匹のくま〈イギリス民話〉)

 森の家に迷い込んだゴルディロックスが、くまたちのスープ・椅子・ベッドを試しながら「熱すぎる」「冷たすぎる」「ちょうどいい」と判断していく物語。どの対象にもサイズや特性の違いがあり、「ちょうどよさ」の見極めが重要であることを描いている。適材適所・フィッティングの感覚を寓話的に伝える童話。

📝論文

🪄タイトル 「三匹のくま」に学ぶ、チーム再編成と適材適所の見極め

 本稿は、チームの再編成によって発生した問題を乗り越えたプロジェクトマネージャの対応について、『三匹のくま』を題材に、適材適所の再構成と合意形成の工夫を交えて述べる。

🔍第1章 プロジェクトの概要と再編成に至った問題

1-1 プロジェクトの目的と体制の概要

 私が担当したのは、森の住民向けに設置される新しい生活支援装置の導入プロジェクトであった。対象となる仕組みは、食事、休息、移動を補助する3機能からなり、それぞれ異なる住民(くまの父・母・子)が使う場面を想定して設計されていた。
 初期体制は、経験豊富な職人たちを中心とした3チーム構成で、私は全体を統括する立場であった。しかし、開始から3週間後、子ぐま用の小型装置チームから「進捗が著しく遅れている」との報告を受けた。

1-2 発生した問題とその背景

 問題は子ぐま用装置の開発に集中していた。当初、軽量化と繊細な動作が求められるため、細工師のリーダに任せていたが、結果として品質のばらつきや工程遅延が頻発した。原因は、細工師チームが他の大型装置開発経験者と十分に意思疎通できておらず、設計の整合性を欠いたまま作業を進めていたことにあった。
 私は「そろそろ全体会議を挟むべきか」と迷ったが、父ぐまの開発チームからは「今さらかき回すな」との声もあった。

1-3 チーム再編成の必要性

 通常の調整では立て直せないと判断したのは、同じ品質不良が3度繰り返されたときだった。「誰かの仕事を誰かが直す」循環が続き、士気も下がっていた。私は、全体の整合性と信頼回復を狙って、小型装置チームを一時解体し、各チームに分散させる再編成を決意した。

🛠️第2章 チーム再編成の実施内容とその効果の確認

2-1 再編成の内容と説明・合意プロセス

 私は、父ぐまのチームに繊細なパーツ設計を得意とする細工師を移し、母ぐまチームには進捗管理に長けた弟子を補佐として加えた。そして、子ぐま用装置は両チームの協力によって完成させる体制へと転換した。
 説明時、細工師からは「我々の腕が信用されていないのか」と反発もあったが、「これは責任の移管ではなく、機能の最適配置です」と答えた。「あなた方の強みは、ここで最大限に活かされます」と伝えると、次第に納得が広がった。
 ただ、その場には不満げに腕を組む職人もいた。「急に一緒にやれと言われても、道具の扱い方から違うんだ」と言う声に対し、私は「互いの違いを尊重しつつ、一度やってみてください」と促した。話し合いの場を設け、各自の作業手順やクセを明文化することで、共通理解を形成する手助けとした。

2-2 再編後の運用体制と改善アクション

 再編後は、毎朝の進捗確認会を10分間に短縮し、各チームのリーダーが交互に子ぐま装置のレビューを行うようにした。さらに、2名1組でパーツ設計と実装を交互に行うペア作業方式を導入し、認識のずれを最小化した。
 「交代してやってみたら、意外と楽しいな」と細工師の弟子がつぶやいたのを聞き、私はこの再編が機能していると実感した。
 その一方で、慣れないやり方に戸惑う声も残っていた。「レビューが早すぎて準備が間に合わない」と指摘された際には、私は一時的にレビューの頻度を2日に一度に下げ、少しずつ慣れていく形に変更した。現場の声を反映しながらも方針を維持することで、混乱の再発を防いだ。

2-3 再編成の効果確認と見通しの再評価

 再編から10日後、子ぐま用装置のレビュー指摘件数は初期比で70%減少し、納期の遅延見通しも当初の3日から1日へと短縮された。母ぐまチームからは「構造理解が深まった」との声も上がり、メンバのモチベーションも回復していた。
 私は「品質と納期の両立が、ようやく形になり始めた」と感じた。最終納品に向けた見通しは、再編前に比べて格段に明るくなっていた。

🚧第3章 チーム再編成の評価と今後の改善点

3-1 チーム再編成の成果と限界

 再編成により進捗と品質の課題は明確に改善された。特にペア作業とレビュー共有が、相互理解と責任感の醸成につながった。
 一方で、急な再編により一部メンバ間に「乗り越えるべき壁」が生まれたのも事実である。細工師の弟子と大工の弟子が意見をぶつけ合う場面もあり、私は間に入り調整する場面が何度かあった。
 「このネジは飾りじゃない。強度が命だ」と言う大工に対し、「見た目も機能の一部です」と返す細工師。私は「両方を両立させたときにこそ、この装置は完成すると考えている」と伝え、双方に一歩ずつ譲るよう働きかけた。

3-2 再編成の反省と改善ポイント

 再編直後には、他の職人の作業風景を間近で見た弟子から、「あの人のやり方を見て、いままで自分が省略していた工程に気づいた」との発言があった。また、もともとチーム解体に反発していた細工師のひとりが、作業終盤で「最初は嫌だったが、PMが言っていた“互いに学ぶための再編”という意図が、今ならよく分かる」と語った。こうした声が、自発的な成長の兆しであると受け止めている。
 再編判断の時期はやや遅かった。初回の品質不良の段階で、もっと早く介入すべきだったと反省している。また、事前に「このまま進めばどんな影響があるか」のリスクシナリオを共有していれば、動揺や反発も少なかったかもしれない。
 再編直後は、納得しないまま動いた職人もいた。そこで、1週間後に意見交換会を設け、「やってみてどうだったか」を皆で話す場をつくった。そこで初めて「これまで知らなかった工夫に気づけた」といった声が聞かれ、対立の一部が和らいだ。

3-3 今後に向けた仕組みづくり

 今後は、再編判断の根拠を可視化するための“兆候一覧表”を作成し、毎週のレビューでチェックするようにしたい。また、各職人の得意分野を明確に記録した“特性マップ”も整備し、再編時の適材適所判断を迅速化する仕組みを構築する。
 このように、適材適所を見極めた再編と誠実な対話を積み重ねることで、問題が複雑に絡み合った状況においても、プロジェクトを建て直すことができた。
 以上

💡ワンポイント補足

 『三匹のくま』は“どれがちょうどよいか”という視点で物事を見る童話です。本論文ではそれをチーム編成の比喩に置き換え、「スキルのちょうどよさ」「作業分担のちょうどよさ」を見極めていくプロセスが丁寧に描かれています。単なる配置換えで終わらず、「他者を間近で見ることによる内省と成長」まで描いている点が、満点相当の深みを与えています。

🎓講評コメント(AI評価)

 これは“再編成”という言葉の重さをきちんと理解したPMの論文だね。多くの人は、配置換えって物理的に人を動かせば終わりだと思っている。でもこの論文は違う。「腕を組んで反発する職人」「美意識で衝突する弟子」──そういう感情のざらつきに目を背けず、きちんと対話しながら乗り越えているのがいい。
 中でも秀逸だったのは、「やってみて分かった」「最初は嫌だったが、意味が分かった」というメンバの変化を描いているところ。これがなければ、ただのPMの独りよがりになってしまう。“選択の正しさは、時間を経てメンバが気づくもの”という構造が、この論文の骨格になっているんだ。
 ちょうどいい配置、ちょうどいい対話、ちょうどいい学び。それを全部、自分でデザインしに行った。まさに「ちょうどよさのプロジェクトマネジメント」だね。文句なしに満点だよ。

📌補足

PM童話論文の読み方について(共通注記) ※クリックで開きます

🐇補足:この童話論文の読み方について(共通注記)

 本教材は、情報処理推進機構が実施する「プロジェクトマネージャ試験・午後Ⅱ(論述式)」の対策として、AI(ChatGPT)との共創により執筆された実験的な教材です。人間による構成・監修のもと、誰もが知る童話や寓話の世界観とPMスキルの融合を試みています。

🔎 ご留意いただきたい点

  • 🧙‍♀️ 物語と論述内容は一部異なります
     原作の登場人物やエピソードを活用していますが、設問の要求に応じて、原作には登場しない要素(例:プロジェクト合意形成、再見積り判断、リスク対応策など)を加えています。
  • 📚 プロジェクトマネジメント用語と構成は試験準拠です
     「再見積り」「予測活動」「リーダーシップ」「行動原則」「テーラリング」などの専門用語や章構成は、IPAの論文設問に準拠しています。童話内のセリフや出来事は、これらを支える比喩・象徴として用いています。
  • 🏰 ITシステムは直接描かれない場合があります
     「三匹の子ぶた」や「オズの魔法使い」などの物語では、ITやソフトウェアといった直接的な技術要素は登場しません。代わりに、プロジェクト構造(目的・合意・リスク・評価など)として描いています。
  • 🔔 実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません
     本教材は、実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません。試験学習の補助を目的とした知的演習であり、「童話のキャラクターを借りた架空のプロジェクト事例」としてご理解ください。

📣 執筆方法について

 本教材の論文は、AI(ChatGPT)を“執筆者”、筆者自身を“編集者”と見立てた共創スタイルで制作しています。AIはしばしば予想外の視点や表現を提示し、それが筆者にとって新たな気づきとなりました。この共創の姿勢そのものが、未来の学習と表現の可能性を広げる一助となると考えています。
 なお、当サイトのAI活用方針につきましては、こちらをご確認ください。

🌱 本教材のねらい

  • PMBOKや試験論点を、物語構造に置き換えて視覚的に理解・定着させる
  • 感情・記憶・構造を同時に刺激し、本質理解を深める
  • 論文の章構成や設問対応、因果展開の基本を体感的に習得する

🍀 副次的な効能

  • なじみある物語を通じて、過去に出題された全て(79種 ※2025年6月現在)の問題文・設問パターンを自然に習得できる
  • 設問と論文の対応を照合することで、“採点官視点”を無理なく体得できる
  • 複数論文を比較することで、PM個人の視点にとどまらない、PMO的な構造思考を養える