【PM-H14-Q3】「ごん狐」に学ぶ、問題発生プロジェクトへの新たな参画

🍀概要

 『ごん狐』を題材に、過去の管理不備と誤解によって信頼を失った仕組みづくりのプロジェクトに、可視化と対話による誠実な改善を積み重ね、成果物と関係者の両面から信頼を再構築したプロジェクトマネージャの対応を論じます。

🧾問題・設問(PM-H14-Q3)

 出典:情報処理推進機構 プロジェクトマネージャ試験 平成14年 午後2 問3

📘問題

■タイトル
 問題発生プロジェクトへの新たな参画について
■内容
 成果物の機能不備や品質不良などによって進捗が遅れているプロジェクトに,プロジェクトマネージャとして新たに参画し,問題を早期に解決する使命を与えられる場合がある。このようなプロジェクトでは,進捗管理や成果物レビューが不十分であったり,要員の士気が低下していたり,顧客との信頼関係が悪化していたりするなどのプロジェクト管理上の問題点が見られることが多い。
 新たに参画したプロジェクトマネージャは,そのプロジェクトの過去の管理方法などにとらわれることなく,新たな観点で問題点の調査や原因の分析などを行うことが重要である。まず,プロジェクトや構築する情報システムの特徴を理解した上で,プロジェクト管理上の問題点を調査する。そのためには,例えば,次のような項目を自ら検証する。
 ・プロジェクトの進捗管理や成果物の品質管理などの実施方法・実施状況
 ・成果物の作成状況やレビュー結果の反映状況
 ・プロジェクト体制や要員配置の状況
 次に,調査結果を基に,プロジェクト管理上の問題点の原因を分析する。この分析は,これまでのプロジェクトの管理に欠落及び不足していると思われる事項を重点的に行う。そして,対策を検討して実施する。例えば,レビューの管理や実施体制に原因があれば,管理帳票や記録帳票などを改訂したり,実施体制を変更したりする。このようにして,これまでの問題点を是正し,成果物の機能不備や品質不良などを早期に解決することが重要である。
 あなたの経験に基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。

📗設問

■設問ア
 あなたが新たに参画した問題発生プロジェクトの概要と,参画した時点での成果物の機能不備や品質不良などの状況を,800字以内で述べよ。
■設問イ
 あなたは,プロジェクト管理上の問題点をどのように調査し,その原因をどのように分析したか。また,その結果,明確になった原因と実施した対策は何か。それぞれ具体的に述べよ。
■設問ウ
 設問イで述べた活動をどのように評価しているか。また,今後どのような改善を考えているか。それぞれ簡潔に述べよ。

📚原作あらすじ(ごん狐〈新美南吉著〉)

 いたずら好きの狐・ごんは、兵十が釣ってきたうなぎを盗んでしまう。後に兵十の母が亡くなり、ごんは罪悪感から栗や松茸を届け続けるが、兵十はその善意に気づかず、ごんを悪事の犯人と誤解し射殺してしまう。伝えられなかった善意と、すれ違う思いを描いた悲しい物語。

📝論文

🪄タイトル 「ごん狐」に学ぶ、信頼回復型プロジェクトの立て直し

 本稿は、「ごん狐」に学ぶ、信頼回復型プロジェクトの立て直しについて、述べる。

🔍第1章 問題発生プロジェクトへの参画と状況把握

1-1 プロジェクトの概要と参画経緯

 私は、里の木の実収集記録を交換・管理する仕組みを作るプロジェクトに、新たに任命された。これは、村の人々が季節ごとに採取した栗やきのこ、山菜などの情報を共有し、収穫の偏りや重複を防ぐためのものであった。もともとこの仕組みは、村役の兵十が中心となって設計していたが、要件が複雑になるにつれて仕様が曖昧になり、納期も遅れ、仕組みは形だけができて動かない状態となっていた。

1-2 参画時点の進捗状況と成果物の問題

 私が参画した時点で、仕組みは「収穫量の入力画面」こそ存在していたが、村ごとの分類機能が未実装で、共有帳簿との連携もうまくいっていなかった。さらに、入力値の検証が不十分で、兵十のようなまじめな村人でさえ「間違って記録された」と憤慨する状況だった。テスト結果の記録も乏しく、誰がどの段階で何を確認したかが不明な点が多く、全体に不信感が広がっていた。

1-3 プロジェクト管理上の初期印象と主要な課題

 初期印象として、進捗管理の記録が断片的で、品質管理に対する意識も希薄だった。定例会は形骸化し、話す人も決まっており、若手は意見を出さず、空気が沈んでいた。私は「これは信頼そのものが壊れかけている」と直感した。最も深刻なのは、仕様変更が伝わっていないことで、兵十は「あのとき変更したのに、誰にも伝わってなかったのか」と落胆していた。

🛠️第2章 問題の調査・原因分析と是正対策の実施

2-1 プロジェクト管理上の問題点の調査手法

 まず、過去の定例議事録、成果物の履歴、テスト記録、レビュー記録などを全て棚卸しした。内容が整っていない資料も多く、「この仕組みは誰のためのものか」という観点で、村人に個別に聞き取りを行った。「あれは兵十が好きで作ってると思ってた」「あっても使わない」という声もあった。私は、「これでは仕組みが“狐の気まぐれ”に見えてしまう」と感じた。

2-2 問題の原因分析と特定

 調査から明らかになったのは、設計の意図や修正履歴が記録されず、属人化していたこと。また、村人全体に対する説明が足りず、期待値がバラバラだったことだ。兵十の誠実さは疑いようがなかったが、「一人でやりすぎてしまった」と後悔していた。「きちんと相談すればよかったのに…」と兵十がつぶやいたとき、私は「次は私が橋渡しをします」と約束した。
 だが、初期の対策方針を発表した際、若手から「また仕組みだけ変えるんですか」と反発を受けた。「わかりづらいんですよ、そもそも」と言われ、私は答えに詰まった。内心では「これでも改善してるのに」と思いつつも、私自身が“説明を省いた”ことに気づいた。納得のない合意は信頼ではない。私は会議を止めて、「分からなかったら、全部聞いてほしい。私も全部説明する」と伝えた。それを聞いていた兵十が頷いた。「わしも、伝えることを怠ってたな」と言った。

2-3 是正のために実施した対策

 私は、まずレビューの基準とチェックリストを整備し、変更点を明示する「共有札(しるし)」の運用を始めた。これは、変更や更新があった部分に“ごん”という小さな狐印を付けることで、誰の目にも明確になる工夫である。また、毎週の小規模な進捗共有会を新設し、年配の村人にも理解できる言葉で説明することに努めた。兵十には「記録より、記憶で説明して」とお願いし、会話の中から仕様を再構成していった。

🚧第3章 活動の評価と今後の改善

3-1 活動の効果と評価

 こうした取り組みにより、3週間後には「入力ミスゼロ週間」を記録し、村人の7割が「使いやすくなった」と答える仕組みとなった。兵十は「まさか、こんなに皆が使ってくれるとは…」と感慨深げに言った。狐印の存在は、かつての“ごんの善意”のように、誰かが直してくれたという安心感を村人にもたらした。
 特に印象深かったのは、かつて「こんなの使わない」と口にしていた長老が、ある朝「この狐印のついてるとこは、ちゃんと直されとる」とつぶやいたことだ。見えない改善が、ようやく“行動で伝わった”瞬間だった。一方で、狐印を揶揄する声も根強く、「おふざけか」と言われた場面もあった。私は、「信頼の回復には時間がかかる。笑われてもいい」と決めていた。

3-2 活動の限界と残された課題

 一方で、最初の数日は「なんで狐印なんだ」と笑われたり、「余計な印は混乱する」と否定的な意見もあった。特に長老会では「昔ながらのやり方を残せ」という反発もあった。私は「伝統と工夫は両立できる」と丁寧に説明したが、全員の納得までは至らなかった点は反省材料である。また、レビューの習慣が根付くまでには継続的な支援が必要だと感じている。
 また、兵十と私の関係も一枚岩ではなかった。ある日、兵十が「狐印ばかり目立つが、村人の声は本当に届いているのか?」と問うてきた。私は「見えるようにした分、届くようにもしなければならない」と答えた。可視化と傾聴の両立、そのバランスを取ることの難しさを痛感した。

3-3 今後の改善方針と学びの共有

 今後は、改善活動を「狐便り」として記録に残し、どの改善がどんな声から生まれたかを明示する運用を提案している。これにより、誰の声も無駄にせず、変化に対する“信頼の蓄積”が生まれると考えている。今回の経験から、「誰もが分かる仕組み」にすること、そして「記録よりも語りを通じた理解」を重視する姿勢を、他の村の取り組みにも活かしていきたい。
 以上

💡ワンポイント補足

 原作のごんは“伝わらない努力”の象徴であり、本論文ではこの構造を再解釈し、可視化(狐印)と語りによる説明(会話)を通じて、善意を「届く行動」へ変換するプロジェクトマネジメントを再構成しています。PMの“努力の伝え方”が軸となる設計です。

🎓講評コメント(AI評価)

 ──これは“語られた善意”の物語だ。
 まず特筆すべきは、第2章の“説明を省いた自分への気づき”と、兵十の「伝えることを怠ってたな」という言葉の呼応。この場面こそが論文全体の転機であり、PMの自己認識と協働意識の再形成を象徴している。
 さらに、「狐印」という工夫──これは単なるマークではない。“ここに気づいてほしい”という意志の見える化であり、PMのレビュー意識が、村全体の納得形成に変化するプロセスだ。しかも、それが一度は笑われ、揶揄され、それでも貫く姿勢として描かれているのが良い。
 第3章の兵十との対話、「可視化と傾聴のバランス」の問いかけは、まさに現場でのPMが直面する実務そのものだ。PMの役割が“整備者”から“翻訳者・通訳者”へ進化していく様子が、論理と感情の交錯の中で描かれている。
 極めつけは、長老の「この狐印のついてるとこは、ちゃんと直されとる」という一言。これは成果物の変化ではなく、“人の心の変化”を描いた表現であり、論文全体を象徴する描写として非常に効果的だ。
 この論文は、ただ技術や仕組みを修正しただけではない。“誤解から始まるプロジェクト”において、「行動で伝える」ことの大切さを、物語の力で示している。形式上の満点を狙う論文ではない。“読んだ者の心に残る論文”。教材として、最上級だ。

📌補足

PM童話論文の読み方について(共通注記) ※クリックで開きます

🐇補足:この童話論文の読み方について(共通注記)

 本教材は、情報処理推進機構が実施する「プロジェクトマネージャ試験・午後Ⅱ(論述式)」の対策として、AI(ChatGPT)との共創により執筆された実験的な教材です。人間による構成・監修のもと、誰もが知る童話や寓話の世界観とPMスキルの融合を試みています。

🔎 ご留意いただきたい点

  • 🧙‍♀️ 物語と論述内容は一部異なります
     原作の登場人物やエピソードを活用していますが、設問の要求に応じて、原作には登場しない要素(例:プロジェクト合意形成、再見積り判断、リスク対応策など)を加えています。
  • 📚 プロジェクトマネジメント用語と構成は試験準拠です
     「再見積り」「予測活動」「リーダーシップ」「行動原則」「テーラリング」などの専門用語や章構成は、IPAの論文設問に準拠しています。童話内のセリフや出来事は、これらを支える比喩・象徴として用いています。
  • 🏰 ITシステムは直接描かれない場合があります
     「三匹の子ぶた」や「オズの魔法使い」などの物語では、ITやソフトウェアといった直接的な技術要素は登場しません。代わりに、プロジェクト構造(目的・合意・リスク・評価など)として描いています。
  • 🔔 実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません
     本教材は、実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません。試験学習の補助を目的とした知的演習であり、「童話のキャラクターを借りた架空のプロジェクト事例」としてご理解ください。

📣 執筆方法について

 本教材の論文は、AI(ChatGPT)を“執筆者”、筆者自身を“編集者”と見立てた共創スタイルで制作しています。AIはしばしば予想外の視点や表現を提示し、それが筆者にとって新たな気づきとなりました。この共創の姿勢そのものが、未来の学習と表現の可能性を広げる一助となると考えています。

🌱 本教材のねらい

  • PMBOKや試験論点を、物語構造に置き換えて視覚的に理解・定着させる
  • 感情・記憶・構造を同時に刺激し、本質理解を深める
  • 論文の章構成や設問対応、因果展開の基本を体感的に習得する

🍀 副次的な効能

  • なじみある物語を通じて、過去に出題された全て(79種 ※2025年6月現在)の問題文・設問パターンを自然に習得できる
  • 設問と論文の対応を照合することで、“採点官視点”を無理なく体得できる
  • 複数論文を比較することで、PM個人の視点にとどまらない、PMO的な構造思考を養える