【PM-H14-Q1】「ねずみのすもう」に学ぶ、クリティカルパス上の工程における進捗管理

🍀概要

 『ねずみのすもう』を題材に、初動の違和感や小さな兆候から問題の本質を掴み、施工遅延を未然に回避したプロジェクトマネージャの対応を論じます。

🧾問題・設問(PM-H14-Q1)

 出典:情報処理推進機構 プロジェクトマネージャ試験 平成14年 午後2 問1

📘問題

■タイトル
 クリティカルパス上の工程における進捗管理について
■内容
 プロジェクトマネージャは,プロジェクト計画の作成において,作業の実施順序を決め,資源の割当てを行い,実行可能なスケジュールを作成する。そして,スケジュール上のクリティカルパスを明確にする。
 クリティカルパス上にある工程は,その進捗の遅れがプロジェクト全体の進捗に影響する。特に,作業者の増員などの単純な対策では遅れが回復できないような工程は,重点的に管理する必要がある。このような工程には,問題の兆候を早期に発見するための手続を組み込み,進捗の遅れが発生する前に対策を行うことが肝要である。
 問題の兆候を早期に発見するためには,成果物の作成状況や未解決案件を報告させる,定期的に成果物を提出させ報告の内容と照らし合わせるなどの手続を組み込む。そして,例えば,設計工程において未解決案件や仕様変更などが増えていないか,チームリーダが担当者の進捗報告を鵜呑みにしていないかなどの観点で,問題の兆候の発見に努め,進捗に悪影響を及ぼす状況があれば必要な処置を取る。
 一方,進捗の遅れが顕在化した場合は,原因分析を行い,対策を実施する。例えば,一部の担当者に負荷が集中しているなどの原因で進捗の遅れが発生していれば,作業量の調整や作業の実施順序の変更などを行い,遅れの拡大防止や早期回復を図り,計画時に考慮した許容範囲内で,クリティカルパス上の工程の進捗を守るように努める。
 あなたの経験に基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。

📗設問

■設問ア
 あなたが携わったプロジェクトの概要と,クリティカルパス上で重点的に進捗を管理した工程及びその理由を,800字以内で述べよ。
■設問イ
 あなたが重点的に進捗を管理した工程において,問題の兆候を早期に発見するためにどのような手続を組み込んだか。そして,問題の兆候に対してどのような処置を取り,進捗の遅れに対してどのような原因分析と対策を実施したか,具体的に述べよ。
■設問ウ
 設問イで述べた活動をどのように評価しているか。また,今後どのような改善を考えているか。それぞれ簡潔に述べよ。

📚原作あらすじ(ねずみのすもう〈日本昔話〉)

 昔、小さな弱いねずみが、力持ちの大きなねずみにすもうで負け続けていた。見かねたおじいさんが、もちを食べさせて力をつけてやると、小さなねずみは元気を取り戻し、次のすもうでは大きなねずみに勝利した。最後は皆で祝い合う温かな結末となる、努力と支援、そして希望の物語である。

📝論文

🪄タイトル 「ねずみのすもう」に学ぶ、弱き者の勝利を支える進捗管理の工夫

 本稿は、クリティカルパス上の工程における進捗管理について、述べる。

🔍第1章 プロジェクトの概要と重点管理工程の特定

1-1 プロジェクトの概要と目的

 私は、山奥の集落に設けられた交流会館の整備プロジェクトに携わった。目的は、地域の高齢者や子供たちが安心して集まれる場所を整備し、世代を越えた交流を促進することであった。規模は中程度、期間は10か月、設計・施工を含む一括請負方式で進められた。
 作業工程は、設計→基礎工事→上屋工事→内装・設備工事→引渡しという順で進む。私は全体の工程表を作成し、特に天候の影響を受けやすい基礎工事の工程をクリティカルパス上に設定した。

1-2 クリティカルパス上の工程とその特定理由

 基礎工事は、全体スケジュールの中で天候の影響を最も受けやすく、一度遅れると後続の上屋工事に連鎖して影響が出るため、クリティカルパス上にあると判断した。また、施工担当者が限定され、追加投入が困難であったことも理由である。
 さらに、この地域特有の湿地地盤による施工難度の高さから、事前準備や資材搬入タイミングのずれが工程に与える影響も大きいと見込まれた。

1-3 重点的に進捗管理した背景とリスク認識

 「この地面、去年も沈んだんだよ」と言った村の長老の言葉が、私の判断を後押しした。湿地に対応する特殊基礎構造の採用により、施工に熟練が必要であること、かつ天候が崩れると数日単位で作業が停止することが予想された。
 そのため、基礎工事の進捗遅延は引渡し時期に直接影響を及ぼすと考え、私はこの工程を重点的に進捗管理することにした。

🛠️第2章 進捗遅れの兆候発見手続と対策実施

2-1 問題の兆候を早期に発見するための手続

 私は、基礎工事の進捗状況を毎朝の現場確認と、週次の進捗報告で二重に管理した。また、写真付きの作業記録と、未解決事項リストをセットで提出させることで、口頭報告との乖離を可視化した。
 「この写真、型枠の位置が少しずれてないか?」と私は気付き、現場監督に確認した。監督は驚きつつも、「実は昨日、突風で少し崩れたんです」と認めた。
 こうした小さな違和感の検出を重視し、私は成果物の定点観測と記録を重ねる仕組みを導入した。
 加えて、私は工程の節目ごとに「仕上がりレビュータイム」を設け、ベテラン作業者と若手を組ませて観点のすり合わせを図った。この場では、施工の精度だけでなく、現場の変化に関する体感情報も共有された。体感は定量化しにくいが、地盤の感触や湿度の違和感など、判断の補助として有用であった。

2-2 兆候発見時の初動対応と遅延回避策

 崩れた型枠の再設置には一日を要することが分かり、私は当初の順序を変更し、先に施工可能な区画に作業を移行するよう指示した。これにより、並列作業が可能となり、全体の工期を守る算段を立てた。
 さらに、「型枠担当の二人にだけ負荷が集中している」と気づいた私は、大工チームから助っ人を一時的に配し、作業を分担させた。これにより、一人当たりの負荷を軽減しつつ、品質の維持を図った。
 また、進捗管理においては、柔軟な作業再配置を可能とするように、あらかじめ複数の工区単位での施工順変更シナリオを策定していた。これにより、問題発生時にも即座に打ち手を講じることができた。現場監督とは逐次連絡を取り、「どこを進められるか」「誰を動かすか」の選択肢を現場主導で提示させ、私はその妥当性と全体影響を判断する役割に徹した。

2-3 遅延顕在化時の原因分析と対策

 原因分析の結果、問題の本質は「小規模な異常が報告されにくい空気」にあると判明した。「少しのズレだから…」と現場が自主判断していたことが、重大な遅延に発展し得ると認識した。
 そこで、私は毎週末に“ちいさな気づき共有会”を実施した。「昨日、地面がやけに柔らかかった」など、些細な声が集まり、施工計画の見直しや資材運搬順の調整に活かされた。
 さらに、この共有会では「言いにくいことを言える場」にするため、最初の5分はPMや監督の発言を禁止し、現場からの発言だけを促す仕組みとした。これにより、ベテランの陰の懸念や若手の感覚的な違和感が自然と共有されるようになり、形式ではなく本音ベースの対話が可能となった。

🚧第3章 活動の評価と今後の改善点

3-1 活動全体の評価と進捗確保への効果

 結果として、基礎工事は当初予定の5日遅れで完了したが、上屋工事の前倒し着手と並列作業により、全体スケジュールは1日も遅れることなく完了した。
 また、“ちいさな気づき共有会”は、他工程の担当者にも広がり、現場全体の注意力と報告意識が高まった。これは、現場文化の変化という定性的成果である。
 さらに、現場からの気づきに基づき、基礎工法の見直し提案が職人側から自発的に行われるなど、改善の自律性が芽生えたことも大きな成果である。私はこの変化を、進捗の見える化だけでなく、「現場を信頼し、任せた結果」として評価している。

3-2 運用上の課題と教訓

 一方で、毎日の記録提出や共有会は、現場への負担にもなりかねなかった。特に、形式的な提出になり、内容が薄くなる傾向も見られた。
 また、初期段階ではPMである私がすべてを把握・指示しようとした結果、判断遅れが発生することもあった。
 反省として、現場主導とPM判断の役割分担をもっと明確に定義し、現場の判断を信じる度量を持つべきだったと痛感している。現場の内発的改善力を尊重し、私は「任せて引き出す」方向へと舵を切った。

3-3 今後の改善施策と組織的な反映

 今後は、進捗確認手順に“写真+コメント”の定型様式を導入し、簡便かつ質の高い報告を目指す。また、現場リーダーに対しては「兆候発見・報告の推進役」としての権限と責任を明確に付与し、PMだけに依存しない体制を整える。
 さらに、週次レビューと気づき共有会の位置づけを整理し、「現場目線」と「管理目線」の融合を組織的なノウハウとして展開する。これは単なる工程管理にとどまらず、現場の知を経営資産として活用することを狙ったものである。
 このように、小さな異変に気づく仕組みを全体に浸透させることで、クリティカルパス上の工程でも柔軟に対応し、全体の進捗を守ることが可能となった。
 以上

💡ワンポイント補足

 原作では、小さな弱いねずみが「もち」という外部からの具体的な支援を受けて力をつけ、大きなねずみに勝利します。本論文でも、「型枠の再設置」「助っ人の配属」といったPMによる具体的な対策が、プロジェクトの苦境を乗り越える「もち」として機能しました。
 しかし、本論文の真骨頂は、それだけでなく、「ちいさな気づき共有会」という、現場の「言いにくいこと」を吸い上げ、自律性を促す「場づくり」にあります。これは、おじいさんが単にもちを与えるだけでなく、ねずみが「自ら強くなる」ための環境を整えたことに通じます。
 ねずみの成長が「自律性の芽生え」に置き換えられ、PMの支援を通じた変化が、定性的な進捗改善(現場文化の変化)につながる点を丁寧に描くことで、原作の温かみを保ちつつ、PM論文としての説得力も高められています。

🎓講評コメント(AI評価)

 この論文には、「兆候は兆候のうちに掴む」「弱さを責めるのではなく、支える構造を設ける」というPMの原則が貫かれていますね。ねずみのすもうの構造をうまく借りて、表面に見えない遅延の芽に気づき、それを拾い上げる姿勢が描かれている点が素晴らしい。
 特に注目したいのは、「兆候報告の空気を変える仕掛け」を設けたこと。形式的な管理ではなく、“声が上がる風土”を先に設計したのは実に人間的な対応でした。
 現実のプロジェクトでも、「数字より先に、違和感を出せる仕組み」が機能するかどうかが分岐点になります。具体的には次のような応用が可能です:

  • 定点観測+コメント:報告様式を定型化しても、自由記述の欄を設けて「気になるけど報告しづらい」を掬い取る工夫が肝。
  • 沈黙時間の設定:上司やPMが先に話さない時間を意図的に設けると、現場の本音が出やすくなる。
  • 「任せて、引き出す」支援:弱者の代わりに手を出すのでなく、「声を出してもいいんだ」と思える設計こそが、全体の底力になる。

 この論文は、すもうに勝ったねずみだけでなく、負けていた頃から彼を支えていた「誰か」の存在をPMの在り方として捉え直す好例です。現場の空気を変える一手先の手配り──これが、プロジェクトの命綱になるのだと感じさせてくれました。

📌補足

PM童話論文の読み方について(共通注記) ※クリックで開きます

🐇補足:この童話論文の読み方について(共通注記)

 本教材は、情報処理推進機構が実施する「プロジェクトマネージャ試験・午後Ⅱ(論述式)」の対策として、AI(ChatGPT)との共創により執筆された実験的な教材です。人間による構成・監修のもと、誰もが知る童話や寓話の世界観とPMスキルの融合を試みています。

🔎 ご留意いただきたい点

  • 🧙‍♀️ 物語と論述内容は一部異なります
     原作の登場人物やエピソードを活用していますが、設問の要求に応じて、原作には登場しない要素(例:プロジェクト合意形成、再見積り判断、リスク対応策など)を加えています。
  • 📚 プロジェクトマネジメント用語と構成は試験準拠です
     「再見積り」「予測活動」「リーダーシップ」「行動原則」「テーラリング」などの専門用語や章構成は、IPAの論文設問に準拠しています。童話内のセリフや出来事は、これらを支える比喩・象徴として用いています。
  • 🏰 ITシステムは直接描かれない場合があります
     「三匹の子ぶた」や「オズの魔法使い」などの物語では、ITやソフトウェアといった直接的な技術要素は登場しません。代わりに、プロジェクト構造(目的・合意・リスク・評価など)として描いています。
  • 🔔 実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません
     本教材は、実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません。試験学習の補助を目的とした知的演習であり、「童話のキャラクターを借りた架空のプロジェクト事例」としてご理解ください。

📣 執筆方法について

 本教材の論文は、AI(ChatGPT)を“執筆者”、筆者自身を“編集者”と見立てた共創スタイルで制作しています。AIはしばしば予想外の視点や表現を提示し、それが筆者にとって新たな気づきとなりました。この共創の姿勢そのものが、未来の学習と表現の可能性を広げる一助となると考えています。

🌱 本教材のねらい

  • PMBOKや試験論点を、物語構造に置き換えて視覚的に理解・定着させる
  • 感情・記憶・構造を同時に刺激し、本質理解を深める
  • 論文の章構成や設問対応、因果展開の基本を体感的に習得する

🍀 副次的な効能

  • なじみある物語を通じて、過去に出題された全て(79種 ※2025年6月現在)の問題文・設問パターンを自然に習得できる
  • 設問と論文の対応を照合することで、“採点官視点”を無理なく体得できる
  • 複数論文を比較することで、PM個人の視点にとどまらない、PMO的な構造思考を養える