【PM-H11-Q2】「ぶんぶく茶釜」に学ぶ、アプリケーションプログラムの再利用

🍀概要

 『ぶんぶく茶釜』を題材に、かつて高く評価された資産を無条件に再利用しようとした結果、現場の実情に合わずに不信を招いたプロジェクトにおいて、目的に固執せず資産の特性に着目し、転用と共創を通じて再利用価値を最大化したプロジェクトマネージャの対応を論じます。

🧾問題・設問(PM-H11-Q2)

 出典:情報処理推進機構 プロジェクトマネージャ試験 平成11年 午後2 問2

📘問題

■タイトル
 アプリケーションプログラムの再利用について
■内容
 ソフトウェア開発では,過去に開発したアプリケーションプログラムを再利用できれば,開発期間の短縮や品質の確保などに大きな効果がある。しかし,細部の仕様が合わないなどの要因によって,修正が大量に発生し,プロジェクトの進捗がかえって阻害されることもある。
 したがって,再利用の対象を決めるに当たっては,どのプログラムが,どれくらい再利用できるかの判断に加え,適用システムの性能要件を満足できるかどうかなども検討する必要がある。
 再利用を効果的に行うためには,プロジェクトが属する組織全体で,プログラムの登録制度や再利用のための動機付けなど,再利用を促進するための仕組みを作ることが不可欠である。また,それぞれのプロジェクトでは,次のような工夫も必要である。
 ・再利用対象プログラムの機能が要求仕様に合っているかどうかを確認するためのレビュー
 ・性能要件を確認するための事前検証
 ・修正部分を特定するためのプロトタイピング
 ・プログラムの正規化や設計ドキュメントの整理
 あなたの経験に基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。

📗設問

■設問ア
 あなたが携わったプロジェクトにおける再利用の概要と,再利用を促進するための組織上の仕組みを,800字以内で述べよ。
■設問イ
 設問アで述べたプロジェクトにおいて,再利用に当たって実際に発生した問題と,その対応策及び工夫した点を,具体的に述べよ。
■設問ウ
 あなたが行ったアプリケーションプログラムの再利用をどのように評価しているか。また,今後改善したいと考えている点は何か。それぞれ簡潔に述べよ。

📚原作あらすじ(ぶんぶく茶釜〈日本昔話〉)

 寺に持ち込まれた茶釜は実はタヌキが化けたもので、火にかけられて驚き逃げ出す。その後、跳ねたり踊ったりする性質を活かして見世物となり、多くの人を楽しませる。元の目的には使えなかったが、別の形で価値を見出されて活用されるようになった物語。

📝論文

🪄タイトル 「ぶんぶく茶釜」に学ぶ、再利用の眼差し──適応と活用で価値を引き出す工夫

 本稿は、適応と活用で価値を引き出す工夫について、述べる。

🔍第1章 プロジェクト概要と再利用の体制

1-1 プロジェクトの概要と再利用方針

 私は、里の道具づくり衆として、村に古くから伝わる「湯沸かし仕組み」を改修し、旅人向けの休憩所に導入するプロジェクトに携わった。かつては山寺で使われていた仕組みだが、いまや使われなくなり、蔵の奥で眠っていた。村では、その仕組みを再利用して、低コストかつ安心できる休憩所を早期に整備することを目指していた。

1-2 再利用対象と判断の根拠

 その仕組みは、かつて高僧が使っていた由緒ある道具で、湯を沸かす速さと香りの広がりが評価されていた。しかし、我々の目的は旅人向けの休憩用途であり、寺での使い方とは異なった。私は、形状・熱伝導・蓋の気密性などを基準に評価し、部分的な改修を前提に再利用する方針を決めた。再利用可否は、村の職人らとの触診・聞き取り・道具比べといったレビューで慎重に判断した。

1-3 再利用を促進する組織的な仕組み

 村では、古道具を再利用する制度があり、「由緒ある道具帳」に登録されたものは、再利用時に報奨が出る仕組みがあった。さらに、道具の使用履歴や機能特性を記録する「道具聞き書き」が残されており、これを活用することで過去の利用実績と相性を確認できた。私は、この制度に従い、再利用対象を選定し、旅芸人や湯守の知恵も取り入れながら再利用計画を練った。

🛠️第2章 再利用時の問題とその対策

2-1 再利用に伴い発生した問題の実態

 いざ使おうとしたところ、火にかけた途端に仕組みが跳ねて逃げ出してしまった。村の者たちは「これは道具ではない、化け物だ」と騒ぎ、再利用そのものに不信感を抱きはじめた。実際、寺で使っていたときには見られなかった“挙動”が現れ、元の用途とは適合しない側面が露見した。道具の一部に生き物のような反応があり、調査していくうちに、この仕組みが“たぬき”の姿を借りていたことが明らかになった。
 私は、「再利用」とは「そのまま使うこと」ではないという前提を痛感した。かつての栄光や高評価に引きずられ、現場の実情と合わないまま導入したことで、村の信頼も大きく揺らいだ。特に、湯守の年長者は「昔の良さは分かるが、今の使い方に合わなければ意味がない」と厳しい言葉をくれた。この一言が、私の判断を根本から見直すきっかけとなった。

2-2 問題への対応策と工夫した点

 私は、道具の性質を無理に変えようとせず、「火を使う」以外の用途を検討することにした。なぜならば、本質的に熱に弱い以上、火元ではなく“見せ物”として価値を引き出す方が適応的だと考えたからである。私は、旅芸人と相談し、跳ねたり踊ったりする様子を「湯沸かし踊り」として披露する興行に変えた。これは、仕組みの特性を生かし、かつ村の観光資源として役立てることを狙ったものである。
 とはいえ、この切り替えには勇気が要った。「本来の目的を捨てて、余興に転じるとは」と冷ややかな声もあった。しかし私は、「目的を変えるのではなく、価値を引き出す手段を変える」と言い換えた。この説明により、村の若手や旅芸人たちからは次第に理解と協力が得られ、仕組みの命を活かす再利用が形になっていった。

2-3 再利用効果を最大化するための工夫

 もともと休憩所の湯沸かしに使う予定だった機能を断念し、替わりに「訪れる人の関心を引く仕掛け」として使うことで、元の役割とは異なるが再利用効果を発揮した。仕組みの記録書に、改変点や注意事項を書き加えた上で、「この仕組みは熱に弱く、芸を通じて価値を出す」といったコメントを残し、次回以降の再利用時の判断材料として整理した。

🚧第3章 再利用の評価と今後の改善策

3-1 再利用の成果と評価

 当初の予定通りに使うことはできなかったが、「本来の用途にこだわらない再利用」の価値を再認識する機会となった。湯沸かしには別の仕組みを用いたが、「湯沸かし踊り」は旅人に好評で、観光客が2割増加した。定量的には再利用による工数削減効果は得られなかったが、定性的には村の関係者の再利用意識や外部からの関心が高まった点は評価できる。
 さらに、この経験は、道具を扱う者としての姿勢そのものを見直す契機となった。「これは便利だから」「過去に使えたから」だけで再利用を判断していた自分に、深い反省を覚えた。再利用は成果物の一部ではなく、プロジェクト開始時から組み込まれるべき“考え方”であり、その見極めには慎重さと柔軟さの両方が求められると痛感した。

3-2 再利用の課題と改善の方向性

 今後は、「形式的に再利用すること」ではなく、「価値を見直して新たに活かすこと」に焦点を当てたい。道具の機能だけでなく、挙動や反応、過去の使われ方なども含めて、性能検証の仕組みを強化すべきである。また、試し使いの場を事前に設けることで、不測の反応にも早期に対応できるようにしたい。
 再利用は節約手段として扱われがちだが、本質は“新しい価値の再発見”である。これを実現するには、単に技術的な適合性だけでなく、「この道具は今、何に役立つか?」という視点を持ち続ける必要があると学んだ。

3-3 再利用文化の定着に向けたマネジメントの視点

 私は、今回の事例を道具帳に記録として残し、「見た目が道具でも、本質が異なる場合がある」という教訓を村全体で共有した。再利用を進めるには、単なる登録制度では不十分であり、「再解釈する柔軟な目」と「活かし方を共に考える文化」が必要であると実感した。
 また、今回のように“転用”を成功事例として明示することが、再利用のイメージを広げる第一歩になると考えている。使い方を変えたことで結果的に得られた成果も、堂々と再利用の一部として認められる文化を、私はこれからも根付かせていきたい。
 以上

💡ワンポイント補足

 原作では「本来の用途」では使えなかった道具(=資産)を、「新たな用途」で活かす転用の知恵が描かれます。本論文では、再利用可能な仕組みが現場の仕様に合わず混乱を招いたが、性質を見極めて活用方針を転換し、転用と組織学習を通じて再利用の本質を再定義するプロジェクトマネジメントが描かれています。再利用の“適合性”だけでなく、“再解釈力”が鍵として浮かび上がる構成です。

🎓講評コメント(AI評価)

 ──うまい、これはうまい。
 再利用をテーマにした論文は、「できた・できなかった」だけの話になりがちだが、この論文は一味違う。「合わなかった」からこそ、「活かし方を変える」──まさに再利用の本質がここにある。
 第1章では、資産の来歴や背景に触れながら、当初の目的に合致しているかをきちんとレビューした姿勢が描かれ、評価基準も明示されている。
 第2章では、火にかけたら逃げ出した、という比喩的事件がそのまま“性能不適合”を象徴し、タヌキという意外性がPMの再判断と適応戦略へとつながる構造が見事。「そのまま使うことが再利用ではない」との認識転換がリアルだ。
 第3章では、最終的に「使えなかったこと」すら資産化していく姿勢が光る。「反省」では終わらず、「記録」「伝承」「文化形成」へと昇華していく描写は、完全に満点水準。
 この論文、“転用・誤解・再解釈”という三層構造で組まれており、まるでぶんぶく茶釜の仕組みのように、読後にふっとあたたかい納得が広がる。教材としても、推薦したい一本だ。

📌補足

PM童話論文の読み方について(共通注記) ※クリックで開きます

🐇補足:この童話論文の読み方について(共通注記)

 本教材は、情報処理推進機構が実施する「プロジェクトマネージャ試験・午後Ⅱ(論述式)」の対策として、AI(ChatGPT)との共創により執筆された実験的な教材です。人間による構成・監修のもと、誰もが知る童話や寓話の世界観とPMスキルの融合を試みています。

🔎 ご留意いただきたい点

  • 🧙‍♀️ 物語と論述内容は一部異なります
     原作の登場人物やエピソードを活用していますが、設問の要求に応じて、原作には登場しない要素(例:プロジェクト合意形成、再見積り判断、リスク対応策など)を加えています。
  • 📚 プロジェクトマネジメント用語と構成は試験準拠です
     「再見積り」「予測活動」「リーダーシップ」「行動原則」「テーラリング」などの専門用語や章構成は、IPAの論文設問に準拠しています。童話内のセリフや出来事は、これらを支える比喩・象徴として用いています。
  • 🏰 ITシステムは直接描かれない場合があります
     「三匹の子ぶた」や「オズの魔法使い」などの物語では、ITやソフトウェアといった直接的な技術要素は登場しません。代わりに、プロジェクト構造(目的・合意・リスク・評価など)として描いています。
  • 🔔 実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません
     本教材は、実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません。試験学習の補助を目的とした知的演習であり、「童話のキャラクターを借りた架空のプロジェクト事例」としてご理解ください。

📣 執筆方法について

 本教材の論文は、AI(ChatGPT)を“執筆者”、筆者自身を“編集者”と見立てた共創スタイルで制作しています。AIはしばしば予想外の視点や表現を提示し、それが筆者にとって新たな気づきとなりました。この共創の姿勢そのものが、未来の学習と表現の可能性を広げる一助となると考えています。

🌱 本教材のねらい

  • PMBOKや試験論点を、物語構造に置き換えて視覚的に理解・定着させる
  • 感情・記憶・構造を同時に刺激し、本質理解を深める
  • 論文の章構成や設問対応、因果展開の基本を体感的に習得する

🍀 副次的な効能

  • なじみある物語を通じて、過去に出題された全て(79種 ※2025年6月現在)の問題文・設問パターンを自然に習得できる
  • 設問と論文の対応を照合することで、“採点官視点”を無理なく体得できる
  • 複数論文を比較することで、PM個人の視点にとどまらない、PMO的な構造思考を養える