【実務思考】【AU-R06-1-PM2-Q1】IT投資のガバナンスに関する監査

🍀概要

 システム監査技術者試験 令和6年 午後2 問1について、AIを活用して、詳細分析した結果を示します。
 本分析は、AIが問題文からその背景にある本質的な課題を深く掘り下げ、システム監査人が目指すべき理想像の一端を理解することに役立つよう、多角的な視点から考察したものです。これにより、単なる模範解答の提示に留まらず、論述問題を通して試される思考プロセス問題解決のアプローチを深く理解するための示唆を提供します。

🧾問題・設問(AU-R06-1-PM2-Q1)

 出典:情報処理推進機構 システム監査技術者試験 令和6年 午後2 問1(🔗取り扱いガイドライン)

📘問題

■タイトル
 IT投資のガバナンスに関する監査について
■内容
 企業などの組織においては,クラウドサービス,AIなどの利活用が急速に進む一方で,大規模災害,サイバー攻撃などのリスクヘの対応が求められている。このよう
な状況の下,IT投資の対象,優先順位などに関する意思決定は,組織の価値向上及び事業継続に重大な影響を及ぼすことから,IT投資のガバナンスの重要性が高まっている。
 組織のIT投資所管部門は,このような背景を踏まえて,IT投資の管理プロセスを整備,運用することが重要である。例えば,事業戦略及びIT戦略で設定された目標を達成するようIT投資計画を策定し,その計画に基づいて,ITに関する開発プロジェクト,基盤構築,人材育成などに投資する。さらに,IT投資に対する効果を評価し,評価結果に応じてIT投資計画を見直す。
 また,IT投資所管部門は,組織のガバナンス体制で求められる役割を遂行し,取締役会などにおけるIT投資に関する意思決定に貢献することが重要になる。例えば,IT投資所管部門は,取締役会などに対して,IT投資の実施状況を適時,適切に報告する。さらに,取締役会などの指示に従って,IT投資計画を見直し,取締役会などの承認を得る。
 システム監査人は,IT投資のガバナンスに関する監査を計画する場合,このような状況を踏まえて,IT投資の管理プロセス及びガバナンス体制に関連付けて,監査の着眼点及び入手すべき監査証拠などを検討する必要がある。
 あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。

📗設問

■設問ア
 あなたが関係する組織におけるIT投資の概要及びガバナンス体制について,800字以内で述べよ。
■設問イ
 設問アで述べたIT投資のガバナンスに関して,監査の着眼点及び入手すべき監査証拠について,IT投資の管理プロセスに関連付けて,700字以上1,400字以内で具体的に述べよ。
■設問ウ
 設問アで述べたIT投資のガバナンスに関して,監査の着眼点及び入手すべき監査証拠について,IT投資のガバナンス体制に関連付けて,700字以上1,400字以内で具体的に述べよ。

📔出題趣旨・採点講評(IPA)

■出題趣旨
 企業などの組織においては,クラウドサービス,AIなどの利活用が急速に進んできている。一方,大規模災害,サイバー攻撃などのリスクへの対応が求められており,組織の価値向上及び事業継続の観点から,IT投資のガバナンスの重要性が高まっている。組織のIT投資所管部門は,このような背景を踏まえて,IT投資の管理プロセスを整備,運用するとともに,IT投資のガバナンス体制で求められる役割を遂行することが重要になる。
 本問では,システム監査人として,IT投資のガバナンスに関する監査をテーマとして,監査の着眼点及び入手すべき監査証拠についての論述を通じて,経営に資する監査を計画するための知識,能力を評価する。
■採点講評
 <全問共通>全問に共通して,システム監査人としての見識や能力などを問うているが,問題文の趣旨又は設問で求めて
いる内容を踏まえていない論述が散見された。また,監査証拠が具体的ではない監査手続に関する記述や論文
の体裁が十分整っていない解答も目立った。自らの経験と考えに基づいて,具体的に論述するように心掛けて
ほしい。
 <問1>問1では,企業などの組織全体におけるIT投資よりも,個別のシステムやプロジェクトにおけるIT投資についての論述が目立った。設問アでは,IT投資のガバナンス体制の記述が不十分な解答が散見された。設問イでは,組織としての体制ではなく個別プロジェクトを対象とした監査に関わる記述が散見された。設問ウでは,IT投資のガバナンス体制に関連付けられていなかったり,入手すべき監査証拠が具体的ではなかったりする記述が散見された。問題文の趣旨や設問で求めている内容を踏まえて,具体的に論述してほしい。

🪄詳細分析(AI)

📝3行まとめ

  1. 【背景】IT投資は、企業価値の向上と事業継続のために重要な経営資源です。
  2. 【監査視点】システム監査では、IT投資の管理プロセスとガバナンス体制の両面を評価します。
  3. 【行動・着眼点】監査人は、計画から事後評価までを検証し、経営層の意思決定を支援する視点を持つべきです。

🧭IT投資のガバナンスに関する監査についての考察

1. 問題の背景と現状分析

  • 現状の課題・問題点:
    • クラウド、AIといった攻めのIT投資と、災害対策、サイバーセキュリティといった守りのIT投資の両方が求められ、IT投資の意思決定が、組織の価値向上や事業継続に極めて重大な影響を及ぼすようになった。
    • このような状況下で、IT投資が、場当たり的、あるいはIT部門任せで決定されており、全社的な経営戦略と整合していないケースが多い。
    • IT投資を、組織全体で統制し、その価値を最大化するための仕組み、すなわち「IT投資のガバナンス」が重要になっている。
    • このガバナンスは、IT投資を管理する「管理プロセス(IT投資ポートフォリオマネジメントなど)」と、そのプロセスを監督・意思決定する「ガバナンス体制(取締役会、IT投資委員会など)」の両輪で成り立つが、その両方、もしくはいずれかが機能不全に陥っている。
  • 変化の必要性の背景:
    • ITの経営への浸透: ITが、もはや単なる業務効率化のツールではなく、ビジネスモデルそのものを支え、競争優位を創出する、経営の中核要素となった。
    • コーポレートガバナンス・コードの要請: 東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードなどで、取締役会がIT投資を含む経営戦略について、適切に監督・意思決定を行う責務が明確化された。
    • リスクの増大と複雑化: IT投資の失敗や、セキュリティ投資の不足がもたらす経営リスクが甚大化し、専門家ではない取締役層も、その監督責任から逃れられなくなった。

2. 理想像の抽出と具体化

  • あるべき理想的な状態:
    • 経営戦略と完全に連動したIT投資: IT投資戦略が、経営戦略・事業戦略からブレークダウンして策定されており、全てのIT投資案件が、どの経営目標に、どのように貢献するかが明確になっている。
    • 規律あるIT投資管理プロセス: IT投資が、①計画策定(戦略連携、案件収集)、②評価・優先順位付け(費用対効果、リスク評価)、③実行・モニタリング、④事後評価・価値実現の確認、という標準化されたプロセスを通じて、ライフサイクル全体で管理されている(ITポートフォリオマネジメント)。
    • 実効性のあるガバナンス体制: 取締役会が、IT投資に関する最終的な監督責任を負う。その下部組織として、経営層とIT部門のトップで構成される「IT戦略委員会」や「IT投資委員会」が設置され、IT投資の管理プロセスを監督し、重要な意思決定を行う。
    • 透明性の高いレポーティング: IT投資所管部門(CIO/IT部門)が、IT投資の状況(進捗、コスト、リスク、効果)を、経営層や取締役会が理解できる言葉(ビジネスの言葉)で、定期的かつタイムリーに報告する。取締役会は、その報告に基づき、適切な指示や助言を与える。
  • 克服すべき障壁:
    • 経営層のITリテラシー不足: 取締役会のメンバーが、ITに関する知識や理解が不足しており、IT投資に関する適切な監督や意思決定ができない。
    • IT部門のコミュニケーション能力不足: IT部門が、投資の必要性や効果を、技術的な専門用語でしか説明できず、経営層の理解や納得を得られない。
    • ガバナンス体制の形骸化: IT投資委員会などが設置されても、それが単なる情報共有の場となり、実質的な議論や意思決定が行われない。
    • プロセスの未整備: IT投資を評価・管理するための客観的な基準やプロセスがなく、投資判断が声の大きい部門長や、属人的な経験と勘に依存してしまう。
  • 利害関係者の視点:
    • 取締役会/経営層: IT投資が、ブラックボックスではなく、統制の取れたプロセスで、経営戦略に沿って行われているという高い保証を得られる。IT投資に関する自らの監督責任を果たすことができる。
    • IT投資所管部門(CIO/IT部門): 経営層の理解と支援の下、戦略的なIT投資を推進できる。投資の成果を明確に示すことで、組織内での存在価値を高める。
    • 事業部門: 自らが起案したIT投資案件が、公正で透明なプロセスで評価される。全社的な視点での優先順位付けに納得感が持てる。
    • 監査人: IT投資という、組織の未来を左右する重要な意思決定プロセスに対して、包括的な監査を行う。単に「管理プロセス」が規程通りに運用されているかだけでなく、それを監督する「ガバナンス体制」が有効に機能しているか、という、より高い視点から評価する。

3. 要約

  • [200文字]要約:
    IT投資は、経営戦略と連動したガバナンスが不可欠。理想像は、規律ある投資管理プロセスと、それを監督する実効性のあるガバナンス体制(取締役会、IT投資委員会)の両輪を確立すること。監査人は、このプロセスと体制の両面から、IT投資の意思決定が有効に機能しているかを評価する。
  • [400文字]要約:
    IT投資の重要性が増す中、その意思決定を統制する「IT投資ガバナンス」が求められている。あるべき理想像は、IT投資を評価・管理する「管理プロセス」と、それを監督する取締役会などの「ガバナンス体制」が両輪として機能することだ。IT部門は、投資の状況を経営層に分かりやすく報告し、経営層はそれに基づき意思決定を行う。監査人は、このプロセスと体制の両方が有効に機能しているかを、それぞれの観点から評価する。
  • [800文字]による詳細な考察:
    本問題は、コーポレートガバナンスとITガバナンスの連携という、現代経営における核心的なテーマを扱っている。IT投資が、もはやIT部門だけの問題ではなく、取締役会が監督責任を負うべき最重要事項の一つであることを明確に示している。監査人もまた、この経営の中枢に関わるプロセスを評価する、高度な役割を期待されている。
    • あるべき理想像とは、「価値創出(Value Creation)を目的とした、ダイナミックなIT投資ガバナンス」の実践である。これは、ガバナンスを、単にリスクを管理し、コストを抑制するための「統制」と捉えるのではなく、ITによる価値創造を最大化するための「舵取り」と位置づける考え方である。この状態では、IT投資委員会は、過去の実績やROIだけでなく、将来のビジネス機会、技術的な選択可能性、組織能力といった、より定性的で未来志向の要素も考慮して、ポートフォリオ全体を議論する。IT投資の成果は、財務的な指標だけでなく、顧客満足度や従業員エンゲージメントといった非財務的な指標でも測定され、そのフィードバックが次の投資判断に活かされる。取締役会は、ITに精通した社外取締役を登用するなどして、ITガバナンスに関する監督機能を実質的に強化している。
    • 理想像実現へのアプローチとして、システム監査人は、二つの異なるが密接に関連する監査を実施する。第一に、「IT投資管理プロセスの監査」。これは、ITポートフォリオマネジメントの各段階(計画、評価、実行、モニタリング)が、定義された手順通りに、かつ客観的な基準に基づいて運用されているかを検証する。投資評価シートや議事録、進捗報告書などが主な監査証拠となる。第二に、「IT投資ガバナンス体制の監査」。こちらは、プロセスを監督する「人間系」の仕組みの監査である。取締役会やIT投資委員会の議事録をレビューし、IT投資に関する実質的な議論が行われているか、IT部門からの報告は適切か、監督機能は有効に働いているか、といった点を評価する。経営層へのインタビューも重要な手続となる。
    • 期待される効果は、IT投資の失敗リスクを低減し、企業の限られた経営資源を、真に価値のある分野へと戦略的に集中させることである。
    • 考慮すべきリスクは、ガバナンスが形式主義に陥り、意思決定のスピードを著しく低下させることだ。監査人は、ガバナンスが、組織の俊敏性(Agility)を損なうことなく、価値創造を促進する「イネーブラー」として機能しているか、というバランス感覚を持って評価する必要がある。

📌補足(考察について)

「考察」の作成手順については、こちらで解説していますので、興味ある方はご参照ください。
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