🍀概要
システム監査技術者試験 令和2年 午後2 問2について、AIを活用して、詳細分析した結果を示します。
本分析は、AIが問題文からその背景にある本質的な課題を深く掘り下げ、システム監査人が目指すべき理想像の一端を理解することに役立つよう、多角的な視点から考察したものです。これにより、単なる模範解答の提示に留まらず、論述問題を通して試される思考プロセスや問題解決のアプローチを深く理解するための示唆を提供します。
🧾問題・設問(AU-R02-1-PM2-Q2)
出典:情報処理推進機構 システム監査技術者試験 令和2年 午後2 問2(🔗取り扱いガイドライン)
📘問題
■タイトル
IT組織の役割・責任に関するシステム監査について
■内容
企業などにおいては,業務改革,コスト削減,新サービス開発などを目的として,パブリッククラウドなどの外部サービスの利用拡大,AI,IoTなどの新技術の導入が進んでいる。これらのIT環境の変化に対応していくために,企業などは,IT組織の役割・責任を適時に見直し,変更する必要がある。
変更されたIT組織がその役割・責任を果たすためには,IT組織内の体制変更や新たな能力の獲得・維持,必要な要員の確保・調整などの取組が求められる。また,IT組織は,役割・責任の変更に伴って新たに発生するリスクを認識する必要がある。
例えば,開発・保守における外部サービスの利用を拡大した場合,外部サービスをマネジメントする役割・責任が求められる。また,外部サービスの利用拡大によって,IT組織内でのOJTの機会が減り,開発工数の見積りなどの能力やシステム機能の知見が維持できなくなるリスクが生じる。さらに,新技術の導入・推進については,新たなソフトウェアや開発手法などの知識・経験不足によって,開発・運用を失敗するリスクが高まる。
システム監査人は,このようなIT環境の変化を踏まえ,IT組織の役割・責任の変更に伴うリスクが適切に認識され,対応策が適切に実施されているかどうかについて確かめる必要がある。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。
📗設問
■設問ア
あなたが関与しているIT組織について,現状の体制及び役割・責任の概要,並びにそれに対して影響を及ぼすIT環境の変化を,800字以内で述べよ。
■設問イ
設問アで述べた状況を踏まえて,IT環境の変化に対応してIT組織の役割・責任をどのように変更するべきであるか,及びIT組織の役割・責任の変更に伴って新たに発生するリスクについて,700字以上1,400字以内で具体的に述べよ。
■設問ウ
設問イで述べたリスクに対応するための具体的な対応策と,その取組状況を確かめるための監査手続及びその留意事項について, 700字以上1,400字以内で具体的に述べよ。
📔出題趣旨・採点講評(IPA)
■出題趣旨
IT組織は,外部サービスの利用拡大に伴って,従来のOJTによる知識・経験が習得できなくなったり,IT組織の要員削減や新たな能力の獲得・維持が求められたりする。また,AIシステムなどの新技術の導入においては,新たな開発手法や技術に関連する知識・経験に加えて,組織全体のデジタル化推進役がIT組織に求められる場合がある。
これらのIT環境の変化によってIT組織に求められる役割・責任の変更は,新たなIT組織の役割・責任を達成できないリスクを発生させる。したがって,IT組織の役割・責任を適切に果たすためには,これらのリスクへの対応策を適切に構築し,有効に運用する必要がある。
本問では,システム監査人として,IT環境の変化によって新たに求められるIT組織の役割・責任を適切に果たすことを阻害するリスクの評価及びこのリスク対応策が適切かどうかを監査するための知識・能力などを問う。
■採点講評
<全問共通>システム監査技術者試験では,システム監査人の立場から論述することを求めているが,システム担当者としての対応を論述している解答が散見された。また,監査手続を求めている論述では,そもそも監査手続の意味を理解できていなかったり,監査の実施内容を論述したりしているものが目立ち,確かめるべき監査項目と監査証拠について具体的に論述できている解答は少なかった。問題文の内容を踏まえて,設問で求めていることを論述するように心掛けてほしい。
<問2>問2では,IT組織の役割・責任の変更に伴うリスクと対応策,及びその取組状況を確かめるための監査手続について論述することを求めているが,個別の情報システム開発やクラウド導入プロジェクト管理などに関する論述が散見された。また,論述しているリスクについても,問題文の記述をそのまま使ったり,IT担当者の能力だけの対応策であったり,設問アで論述したIT環境の変化と整合していない一般論に終始したりする論述が目立った。問題文の趣旨を正しく理解して,設問ア,イ及びウで一貫した論述を心掛けてほしい。
🪄詳細分析(AI)
📝3行まとめ
- 【背景】クラウドやAIなどIT環境の急速な変化により、IT組織の役割・責任も見直しと変革が求められています。
- 【監査視点】システム監査では、役割変更によるリスク認識と、それに対応する体制整備・人材育成・外部サービス管理の実効性を確認します。
- 【行動・着眼点】監査人は、スキル空洞化や過度な外部依存に注意し、IT組織の役割変革とリスク対策の実施状況を具体的に検証すべきです。
🧭IT組織の役割・責任に関するシステム監査についての考察
1. 問題の背景と現状分析
- 現状の課題・問題点:
- クラウド、AI、IoTといった新技術の導入や、外部サービスの利用拡大により、企業を取り巻くIT環境が劇的に変化している。
- この環境変化に伴い、従来の情報システム部門(IT組織)に求められる役割・責任も大きく変わる必要がある。
- しかし、多くのIT組織が、過去の成功体験や既存のスキルセットに固執し、変化に対応できていない。
- 例えば、外部サービス(SaaS, IaaS)の利用を拡大すると、自前で開発・運用する役割は減るが、代わりに、多様なサービスを管理・評価し、ベンダと交渉する「マネジメント」の役割が重要になる。この役割転換がうまくいっていない。
- 役割・責任の変更に伴い、新たなリスク(例:技術力の空洞化、ベンダへの過度な依存)が発生するが、その認識や対策が不十分である。
- 変化の必要性の背景:
- ITのコモディティ化と専門化: インフラ運用のような定型的なIT業務は、専門の外部サービスを利用する方が効率的・高品質になった。一方で、AIやデータ分析といった高度な専門性が求められる領域も出現した。
- ビジネスとITの融合: ITが、ビジネスを後方から支援する役割から、ビジネスそのものを創造・牽引する役割へと変化した。IT組織にも、技術力だけでなく、ビジネスへの深い理解と貢献が求められるようになった。
- 俊敏性(Agility)への要求: ビジネス部門が、市場の変化に迅速に対応するため、IT組織に対しても、よりスピーディなサービス提供を求めるようになった。
2. 理想像の抽出と具体化
- あるべき理想的な状態:
- ビジネス価値創出へのシフト: IT組織のミッションが、「システムの安定稼働」といった守りの目標から、「ITを活用してビジネス価値を最大化する」といった攻めの目標へと転換されている。組織の名称も「情報システム部門」から「ビジネステクノロジー部門」などに変わっている場合もある。
- 役割の再定義とスキル変革: 変化するIT環境に合わせて、IT組織の役割・責任が再定義されている。例えば、インフラ運用チームはクラウド管理チームへ、開発チームはアジャイル開発や内製化支援チームへ、といった変革が行われる。そして、その新たな役割を果たすための、戦略的な人材育成計画(リスキリング、アップスキリング)が実行されている。
- バイモーダルITの実践: 組織のITを、「安定性」を重視する伝統的な領域(SoR: Systems of Record)と、「俊敏性」を重視する革新的な領域(SoE: Systems of Engagement)の二つに分け、それぞれに適した異なる管理手法、組織、スキルセットで運営する(バイモーダルIT)。
- 新たなリスクへのプロアクティブな対応: 役割変更に伴う新たなリスク(技術空洞化、ベンダロックイン、シャドーITの蔓延など)を事前に特定・評価し、それに対する具体的な対応策(例:技術知見を維持するための内製化、マルチクラウド戦略)が講じられている。
- 克服すべき障壁:
- 既存の成功体験と変化への抵抗: 長年、自社システムの開発・運用で評価されてきたIT部門のメンバーが、外部サービスの活用や新たな役割への変化に抵抗を感じる。
- 人材育成の困難さ: 従来のITスキルを持つ人材を、クラウド、AI、アジャイルといった新たな分野の専門家へと再教育(リスキリング)することの難しさ。
- キャリアパスの不透明さ: 新たなIT組織におけるキャリアパスが見えず、優秀な人材が将来を不安に感じて離職してしまう。
- 経営層の理解不足: 経営層が、IT組織を依然として「コストセンター」としか見ておらず、戦略的な役割転換への投資や支援を怠る。
- 利害関係者の視点:
- 経営層: IT組織が、コストセンターから、ビジネスの成長を牽引する戦略的パートナーへと変貌することを期待する。
- 事業部門: IT組織から、ビジネス課題を解決するための、より迅速で価値の高いITサービスや助言を受けられるようになる。
- IT組織のメンバー: 自身のスキルを時代に合わせてアップデートし、より付加価値の高い、やりがいのある仕事に取り組むことができる。市場価値の高い人材へと成長できる。
- 監査人: IT組織が、単に安定運用しているかだけでなく、変化するIT環境とビジネス要求に適応し、その役割・責任を適切に果たしているか、という、より大局的で未来志向の視点から監査を行う。役割変更に伴う新たなリスクが、適切に管理されているかを評価する。
3. 要約
- [200文字]要約:
クラウドやAIの普及で、IT組織は従来の開発・運用から、外部サービス管理やビジネス価値創出へと役割転換が求められる。理想像は、この変化に対応し、役割とスキルを再定義し、技術空洞化などの新リスクを管理すること。監査人は、この組織変革の妥当性とリスク管理を評価する。 - [400文字]要約:
クラウド等の新技術導入により、IT組織は、自前での開発・運用中心から、外部サービス管理やビジネス貢献といった新たな役割への転換を迫られている。あるべき理想像は、この環境変化に適応し、組織の役割・責任を明確に再定義し、必要な人材育成を行うことだ。同時に、技術力の空洞化といった新たなリスクを認識し、対策を講じる必要がある。監査人は、このIT組織の変革プロセスが適切に進められ、新リスクが管理されているかを評価する。 - [800文字]による詳細な考察:
本問題は、デジタルトランスフォーメーション(DX)時代における「IT部門のあり方」そのものを問う、極めて戦略的で重要なテーマである。IT環境の地殻変動の中で、IT組織が過去の栄光に固執すれば「ゆでガエル」となり、自らを変革できれば、ビジネスの主役へと躍り出ることができる。監査人もまた、この変革を評価・支援する、新たな役割を担う必要がある。- あるべき理想像とは、「プロダクト中心の、アジャイルなIT組織」への変革である。これは、IT組織が、一時的な「プロジェクト」をこなす集団から、ビジネス価値に責任を持つ「プロダクト」を継続的に改善していくチームへと自己変革を遂げた状態を指す。この組織では、ビジネス部門とIT部門の壁は取り払われ、プロダクトマネージャー、開発者、運用担当者が一体となった、自己完結型の「スクワッド」が、各プロダクトを担当する。彼らは、外部サービス(クラウド等)を部品として自由に組み合わせ、迅速に価値を顧客に届ける。IT組織の中央機能は、各スクワッドを支援する「イネーブラー」としての役割(プラットフォーム提供、セキュリティガードレール設定、人材育成など)に特化する。
- 理想像実現へのアプローチとして、システム監査人は、まずIT組織の自己変革に関するビジョンやロードマップを評価する。経営戦略と整合しているか、目標は具体的か、ロードマップは現実的か。次に、その実行状況を監査する。①組織・体制の監査:新たな役割定義は明確か、人材の再配置や育成は計画通り進んでいるか。②プロセスの監査:外部サービス選定・管理のプロセスは確立されているか、アジャイル開発のガバナンスは機能しているか。③リスク管理の監査:役割変更に伴う新たなリスク(技術空洞化、ベンダ依存、セキュリティ等)が特定され、対応策が講じられているかを評価する。例えば、「技術空洞化」リスクに対して、定期的な社内勉強会や、一部機能の内製化といった対策が取られているかを確認する。
- 期待される効果は、IT組織が、ビジネスの変化に迅速に対応できる、俊敏で強力なエンジンへと生まれ変わることである。
- 考慮すべきリスクは、変革が中途半端に終わり、組織内に新旧の役割やプロセスが混在し、かえって混乱と非効率を生むことだ。監査人は、変革の進捗と、それに伴う組織的な歪みを継続的にモニタリングし、経営層に警告を発する「早期警戒システム」としての役割も期待される。