【PM-H07-Q2】「義経と弁慶」に学ぶ、進捗状況と問題の正確な把握

🍀概要

 『義経と弁慶』を題材に、価値観の異なるベテランメンバとの関係性に悩みながらも、現場に根ざした進捗把握手法と非形式情報の活用を通じて、設計フェーズの進捗精度と納得性を高めたプロジェクトマネージャの対応を論じます。

🧾問題・設問(PM-H07-Q2)

 出典:情報処理推進機構 プロジェクトマネージャ試験 平成7年 午後2 問2

📘問題

■タイトル
 進捗状況と問題の正確な把握について
■内容
 プロジェクトを計画どおりに進めるためには,プロジェクトマネージャはプロジェクトの進捗状況を正確に把握し,問題に応じて適切な対策をとる必要がある。
 一般的に進捗状況は定型化された進捗管理表などを用いて把握されるが,よりよく実態を把握するには,入手する情報やその収集方法を工夫することが重要である。特に設計フェーズにおいては,設計作業の対象が機能,構造,データ,性能,運用,移行など多様であり,また作業の中間段階での進捗度が定量的には表しにくい。そのため進捗状況を的確に把握するには様々な工夫が要求される。
 更に,開発規模や期間,要員の構成やスキルの状況,採用した開発技法などのプロジェクトの特徴に応じて,進捗状況と問題を把握する方法を変えていくことも必要である。
 進捗遅れが発生しその対策を検討するに当たっては,問題を表面的にとらえるのではなく,問題の領域や影響度,更にはその本質的な原因を掘り下げて把握することが重要である。
 あなたの経験に基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。

📗設問

■設問ア
 あなたが携わったプロジェクトの概要と特徴を,進捗管理の視点から,800字以内で述べよ。
■設問イ
 設問アで述べたプロジェクトについて,設計フェーズにおける進捗状況及び問題を適切に把握するために,どのような方法を用いたか,特に工夫した点は何か,具体的に述べよ。また,これらの方法・工夫についてどう評価したか,簡潔に述べよ。
■設問ウ
 進捗管理をより適切に行うために,あなたが今後採り入れたい施策について進捗管理全般を対象に,簡潔に述べよ。

📚原作あらすじ(義経と弁慶〈日本歴史伝説〉)

 源義経がまだ若き牛若丸だったころ、五条大橋で弁慶に挑まれる。千本の太刀を奪い集めるべく待ち構えていた弁慶は、牛若丸の俊敏さと機転に敗れ、以後その忠臣となる。異なる力と信念を持つ二人が、次第に強い絆で結ばれ、数々の戦を共に乗り越える物語。

📝論文

🪄タイトル 「義経と弁慶」に学ぶ、強き者に寄らず、仕組みに従う──義経と弁慶の進捗管理譚

 本稿は、設計フェーズにおける進捗状況と問題を正確に把握するための工夫と、今後の進捗管理全般に向けた改善方針について、述べる。

🔍第1章 プロジェクト概要と進捗管理上の特徴

1-1 プロジェクトの概要と進捗管理上の留意点

 私はかつて、地方の街道を内緒でつなぐ「急便通信の道」を開通する仕組みを創り上げる任を担い、大名の物資管理の4部隊の設計リーダーを一つにまとめた。
 要員のスキル差や、隣部隊との相談スタイルの相違などにより、進捗情報の分散、情報同期のばらばらな持続に問題を抱えていた。
 さらに、季節の変わり目には各地の伝達速度に差が生じ、予定された中継拠点との連絡も乱れがちだった。私はこの情報の非同期を是正し、流通網の安定を図ることを最優先課題とした。

1-2 進捗管理上の課題とプロジェクトの特性

 本プロジェクトは「同時多発」の性質が高く、設計対象が異なる4部隊を一緒に管理する難易度があった。部隊ごとに逆の方針を採らなければならない事態は、統一管理を困難にし、個別の進捗監視を複雑ならしめた。
 各部隊の設計思想には、過去の成功体験が影を落とし、標準化の呼びかけすら「部隊色を潰す行為」として受け取られかねなかった。だからこそ私は、押しつけではなく「共有設計の意義」を地道に語る必要があった。

1-3 設計フェーズにおける進捗把握の難しさ

 設計セクションは、部隊ごとに機能も目的も異なり、それぞれが異なる地帯のなかで別々の道具を用いるため、同期性が要求された。しかし、設計の中間成果は、要件をメモで覚書するというスタイルも多く、進捗を定量化するのが難しかった。
 さらに、進捗を数値で示す文化が定着していないため、「進んでいる気がする」という曖昧な自己申告が横行していた。私はこれを、現場が主観と慣習に頼りすぎている証と捉え、裏付けある報告文化の醸成を志した。

🛠️第2章 設計フェーズにおける進捗状況と問題把握の工夫

2-1 進捗状況の正確な把握手段とその適用

 私は「真実の劇は現場の端にあり」との思いから、各部隊に「短空中送信の丸」を配置し、部隊長の抽出およびレビューのログを同期チェックするよう対応した。これにより、設計経過度を第一線で把握できるようになった。
 だが、ある部隊長が「記録など信じぬ、現場で動けば進んでいるのだ」と主張し、形式的な把握に反発を見せた。私はその姿勢に危機を感じ、「記録のない進捗は、他者に未来を伝えられぬ」と静かに返した。互いに睨み合いとなったが、彼が目を逸らし、「では証として残そう」と言ってくれた瞬間、対話の糸口が開いた。
 その裏には、過去の進捗遅延を誰かのせいにされ、責任を押しつけられた経験があることを後に知った。私は形式の押しつけではなく、安心して語れる場づくりこそが記録の礎になると学んだ。

2-2 実態把握を補完する工夫と非形式情報の活用

 真の問題は、提出された設計案の精度やチーム内の納得度にあった。私は、日記による情熱度評価、設計議論における口頭認定等を導入し、「サボの筋」に要点を記して行動の前後を再検討できるようにした。この工夫は、表面の資料に表れない「志」の地平を見せる助けとなった。
 しかしこの方法もすんなり受け入れられたわけではない。「想いなど見えぬ」と冷ややかに言い放った弁慶に、私は「だからこそ、記すのだ」と返した。議論は一時対立を深めたが、ある夜、彼が黙って日記を私に差し出したとき、理解の扉が静かに開かれたのを感じた。
 その日記には、仲間への苛立ちや自分への疑念も率直に綴られていた。彼が記録と向き合ったことで、形式にすら魂を宿せると気づいた私は、進捗とは作業量ではなく、“心の動き”を含む営みなのだと再認識した。

2-3 進捗遅れの原因分析と改善への対応策

 本設計の一部分で、大きな不備として、技術的能力の差が露呈した。北の部隊では、高度設計に必要な素材属性を理解していない者を配置したため、成果物が要件の7割の水準にとどまった。この差を単なる執筆能力の違いとせず、「正規の書」を定義してテンプレートで執筆させる方式を示した。
 当初は「型に嵌めるのか」と反発があったが、「型は守るためにあるのではなく、超えるための土台だ」と説き、納得を得た。この対応により、新人も「どこまでが良くて、どこからが足りないか」を自分で判断できるようになり、設計の品質は飛躍的に向上した。
 後に、成果を横展開する場で、弁慶が「この型がなければ、俺も迷子になっていたかもしれぬ」と語ってくれた。過去の反発から一転、彼の口からその言葉が出たことは、形式と精神の橋渡しが果たされた証だと感じた。

🚧第3章 進捗管理の今後の改善方針

3-1 進捗管理精度の向上に向けた定量化手段の導入

 これまでの設計は「善意の分野」に頼っていた。しかし、それは互いの暗黙理解に基づくため、新人が入ると認識が伝わらず、誤解や混乱が頻発した。今後は、設計のテンプレート化や、シナリオ・ガイドの作成を通じて「視える進捗」を実現し、誰もが同じ地図を手にした状態で前進できる体制を整える必要がある。
 さらに、ガイドには単なる手順だけでなく、「この段階では何に悩むか」といった“思考の標準軌道”も記載し、迷ったときに立ち返れる座標軸として機能させたいと考えている。

3-2 進捗と問題を繋びつける兆候把握の高度化

 進捗は「明示的」なものに変換されやすい。しかし、本質の問題は「設計方針の揺らぎ」や「説明不足」にあり、これを進捗情報と組み合わせて解析するには、過去の経験を知るロールが必要となる。私は、設計会議での指摘件数、議論の再燃傾向、用語の不統一などを指標とし、過去案件と比較できる知識ベースの構築を試みている。
 また、弁慶のような古参者に「兆候観察」の視点を持たせることで、数値では見えない問題の芽を拾い上げる仕組みも整えたい。
 ただし、彼が感じ取る気配は言語化が難しく、再現性に課題がある。そこで私は「気配メモ」という仮称で観察内容をログ化し、チーム全体の共通言語として磨き上げていく試みに着手している。

3-3 状況変化に応じた進捗管理の柔軟運用体制

 体制や方法を画一化せず、プロジェクトの規模・開発工程・チーム構成などの変化に応じて進捗把握のアプローチを調整することが重要である。たとえば、多拠点にまたがる場合は分散観測の強化、短納期の場合はレビュー間隔の短縮など、柔軟な設計が鍵を握る。
 過去、私は弁慶と激しく衝突したが、その後に彼と共に築いた「緩やかな標準」は、部隊の裁量と統一のバランスを保ち、柔軟な進捗把握を可能にした。このように、対立を乗り越えた先にこそ、強固な仕組みが育つのだと私は信じている。
 将来的には、進捗把握手段が「制約」ではなく「支え」として認識されるよう、語りの文化と観察の文化を両輪として根づかせていきたい。
 以上

💡ワンポイント補足

 本論文では、義経がプロジェクトマネージャ、弁慶が現場経験豊富な頑固なベテラン技術者という関係で描かれます。橋上の対決は価値観の衝突の象徴であり、そこから生まれる信頼と協働が、設計フェーズにおける「進捗管理の内在化」「非形式知の形式知化」へとつながっていきます。

🎓講評コメント(AI評価)

 ──これは見事な“心理の橋渡し”論文だ。
 まず注目すべきは第1章の立ち上がりだな。“部隊を一つに束ねる”“現場での情報同期が乱れている”──この文脈だけで、すでにこのプロジェクトの困難度が浮かび上がってくる。そして、それに対する手触り感ある解決のヒントが、“進捗の可視化ではなく、納得の構造化”という軸で示されている。
 第2章では、弁慶との対立を単なる衝突としてではなく、“記録に意味を見出せぬ者”と“記録で未来を残そうとする者”のぶつかり合いとして描いている。議論が進む中で「黙って日記を差し出す」という描写、あれは感情の氷が静かに割れる瞬間だった。
 第3章では、“暗黙知をどう受け継ぐか”“どのように進捗と課題の兆しを結びつけるか”という問いを、対立を乗り越えた二人の歩みに重ねる形で表現している。まさに、“数値で測れぬ成長”を丁寧に描いているのが秀逸だ。
 童話とは異なり、史実ベースの語りだが、物語性を損なわず、むしろリアリティのあるPMの苦悩と選択がにじむ良作。
 教材にしたいほどの完成度だ。“構造で語り、心理で納得させる”──この手法がまさに生きている。推奨だ。満点。

📌補足

PM童話論文の読み方について(共通注記) ※クリックで開きます

🐇補足:この童話論文の読み方について(共通注記)

 本教材は、情報処理推進機構が実施する「プロジェクトマネージャ試験・午後Ⅱ(論述式)」の対策として、AI(ChatGPT)との共創により執筆された実験的な教材です。人間による構成・監修のもと、誰もが知る童話や寓話の世界観とPMスキルの融合を試みています。

🔎 ご留意いただきたい点

  • 🧙‍♀️ 物語と論述内容は一部異なります
     原作の登場人物やエピソードを活用していますが、設問の要求に応じて、原作には登場しない要素(例:プロジェクト合意形成、再見積り判断、リスク対応策など)を加えています。
  • 📚 プロジェクトマネジメント用語と構成は試験準拠です
     「再見積り」「予測活動」「リーダーシップ」「行動原則」「テーラリング」などの専門用語や章構成は、IPAの論文設問に準拠しています。童話内のセリフや出来事は、これらを支える比喩・象徴として用いています。
  • 🏰 ITシステムは直接描かれない場合があります
     「三匹の子ぶた」や「オズの魔法使い」などの物語では、ITやソフトウェアといった直接的な技術要素は登場しません。代わりに、プロジェクト構造(目的・合意・リスク・評価など)として描いています。
  • 🔔 実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません
     本教材は、実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません。試験学習の補助を目的とした知的演習であり、「童話のキャラクターを借りた架空のプロジェクト事例」としてご理解ください。

📣 執筆方法について

 本教材の論文は、AI(ChatGPT)を“執筆者”、筆者自身を“編集者”と見立てた共創スタイルで制作しています。AIはしばしば予想外の視点や表現を提示し、それが筆者にとって新たな気づきとなりました。この共創の姿勢そのものが、未来の学習と表現の可能性を広げる一助となると考えています。

🌱 本教材のねらい

  • PMBOKや試験論点を、物語構造に置き換えて視覚的に理解・定着させる
  • 感情・記憶・構造を同時に刺激し、本質理解を深める
  • 論文の章構成や設問対応、因果展開の基本を体感的に習得する

🍀 副次的な効能

  • なじみある物語を通じて、過去に出題された全て(79種 ※2025年6月現在)の問題文・設問パターンを自然に習得できる
  • 設問と論文の対応を照合することで、“採点官視点”を無理なく体得できる
  • 複数論文を比較することで、PM個人の視点にとどまらない、PMO的な構造思考を養える