【PM-H17-Q2】「八十日間世界一周」に学ぶ、稼働開始時期を満足させるためのスケジュールの作成

🍀概要

 『八十日間世界一周』を題材に、絶対に遅らせられない期日を抱えた中で、段階的な合意形成と作業並行化を通じ、時間の束縛に挑んだプロジェクトマネージャの工夫を論じます。

🧾問題・設問(PM-H17-Q2)

 出典:情報処理推進機構 プロジェクトマネージャ試験 平成17年 午後2 問2

📘問題

■タイトル
 稼働開始時期を満足させるためのスケジュールの作成について
■内容
 情報システム開発プロジェクトでは,設計・開発・テストなどの各工程で必要となるタスクを定義し,タスクの実施順序を設定してからスケジュールを作成する。プロジェクトは個々に対象範囲や制約条件が異なるので,システム開発標準や過去の類似プロジェクトなどを参考にして,そのプロジェクト固有のスケジュールを作成する。
 特に,システム全体の稼働開始前に一部のサブシステムの稼働開始時期が決められている場合や,利用部門から開発期間の短縮を要求されている場合などは,プロジェクト全体のスケジュールの作成に様々な調整が必要となる。このような場合,システム開発標準で定められたタスクや,類似プロジェクトで実績のあるタスクとそれらの実施順序を参考にしながら,タスクの内容や構成,タスクの実施順序を調整して,スケジュールを作成しなければならない。
 その際,全体レビューや利用部門の承認などのように,日程を変更できないイベントやタスクに着目するとともに,次のような観点でスケジュールを作成することが重要である。
 ・タスクを並行させて実施することが可能な場合には,タスク間の整合性をとるための新しいタスクを定義する。
 ・長期間かかるタスクの場合は,サブタスクに分割し,並行させて実施したり,実施順序を調整したりする。
 あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。

📗設問

■設問ア
 あなたが携わったプロジェクトの概要と,稼働開始時期が決定された背景を,800字以内で述べよ。
■設問イ
 設問アで述べたプロジェクトで,日程を変更できないイベントやタスクには何があったかについて述べよ。その上で,稼働開始時期を満足させるための調整をどのように行ったか。あなたがスケジュールを作成する上で,特に重要と考え工夫した点を中心に,具体的に述べよ。
■設問ウ
 設問イで述べたスケジュール作成について,あなたはどのように評価しているか。また,今後どのように改善したいと考えているか。それぞれ簡潔に述べよ。

📚原作あらすじ(八十日間世界一周〈ジュール・ヴェルヌ著〉)

 英国紳士フォッグ氏は、賭けにより80日間で世界を一周できるかに挑む。列車や船を駆使し、さまざまな困難に遭遇しながらも、冷静な判断と柔軟な対応で旅を続ける。最後には日付変更線の誤算を利用し、予定よりも1日早く帰国して賭けに勝利する。「計画」と「柔軟さ」の両立を描く冒険譚である。

📝論文

🪄タイトル 「八十日間世界一周」に学ぶ、スケジュール調整と優先順位判断

 本稿は、複数の工程を並行しつつ、稼働開始時期を満足させるためのスケジュールの調整と優先順位判断について、述べる。

🔍第1章 プロジェクト概要と稼働開始時期の背景

1-1 プロジェクトの目的と対象範囲

 私がプロジェクトマネージャを務めたのは、A社の新製品である「夢誘導型音声ナビゲーション装置」の出荷管理を支援する仕組みを構築するプロジェクトであった。この装置は、利用者が眠りについたあと、心拍や呼吸の変化を検知しながら、音声・環境音・香りなどを組み合わせて“好ましい夢”へと誘導する家庭用ウェルビーイング製品であり、ストレス軽減・創造性向上・睡眠満足度の向上など多面的な効用が期待されていた。対象は全国の工場に設置される製造ラインの進捗を可視化し、本部と連携する仕組みであり、部品手配、生産計画、実績入力、異常報告など複数の機能を含んでいた。

1-2 稼働開始時期の決定要因

 本プロジェクトの起点となったのは、新製品発表の記者会見日である。この日程はマスコミ対応と物流センタの受け入れ予定により動かすことができず、その日までに1工場において稼働実績を提示する必要があった。特に、製造現場からのデータ取得とエラー発生時のアラート通知が、デモンストレーションに必要不可欠な要件であった。

1-3 スケジュール策定の前提条件

 プロジェクトには、社内システム部門3名、製造技術チーム5名、外部ベンダ3名が関与していた。過去に一部類似の試作プロジェクトがあったが、本番利用は初であったため、従来の開発標準とアジャイル方式の一部を組み合わせた独自方式で進める必要があった。開発環境の準備にも1週間以上を要したことから、全体期間は90日、実質稼働時間は約70日と非常に限られていた。

🛠️第2章 日程制約への対応とスケジュールの工夫

2-1 日程を変更できないイベント・タスクの明確化

 最大の制約は記者会見当日であり、この日に工場での稼働デモを披露する必要があった。また、月末締め業務との並行運用が難しいため、対象工場では月初2日のみがテスト可能日であった。さらに、外部ベンダの実装支援は毎週水・金の午前中に限定され、レビュー会議も毎週木曜午前と決まっていた。これらは変更が効かず、スケジュールの中核となった。

2-2 スケジュール調整の具体的な工夫

 私はタスクの並行実施を進めるため、以下の工夫を行った。まず、開発を機能単位で分割し、データ取得機能とアラート通知機能を優先して着手した。両者を担当するメンバを分けることで同時進行を実現し、整合性を取るためにレビュー専任者を設けた。また、工場テストの前倒し実施が難しかったため、本部側で仮想データを用いたリハーサルを繰り返し、実演当日のリスクを低減した。
 さらに、ビデオ会議を役割別に2段階とし、現場メンバは冒頭10分の報告・相談の場だけ参加し、詳細検討はリーダー層だけで継続する方式に改めた。これにより、工場メンバの作業時間を削減し、並行作業の時間を確保できた。これは会議形式の見直しを狙ったものである。
 実際、当初は「報告だけで離脱するのは無責任に思える」という声もあったが、私は「一番大切なのは君たちの時間だ。必要なのは全体調整ではなく、現場の力なんだ」と伝えた。すると、「その言葉に救われた」と言ってくれるメンバも現れ、会議方式の変更が現場の疲弊感の軽減にもつながった。

2-3 調整における重要観点と優先順位の判断

 私は、品質と現場負荷の最小化を最優先とした。なぜならば、本件は本番初導入であり、関係者の信頼形成が将来展開の鍵だったからである。実装範囲を最小限とし、使用頻度の高い2機能に絞って投入した。レビュー専任者による早期の不整合検出と、仮想データでの事前確認により、品質とスケジュールの両立を図った。
 ただし、並行作業による負荷集中でメンバの疲弊も見られた。「本当にこれでいいのか?」と現場リーダーから不安の声もあがった。私はその都度、「目的は完成品ではなく、約束の時間に動く仕組みの提示だ」と伝えた。結果、次第に納得が広がり、最小構成での納品を受け入れてもらえた。
 その後も、私は週ごとに1on1面談を実施し、心理的な疲労や不安の兆候を確認することに努めた。「リーダーがちゃんと見ていてくれる」という安心感は、現場の団結力にもつながった。こうした積み重ねが、厳しい条件下でも進捗を守り抜く下支えとなった。

🚧第3章 スケジュール策定の評価と今後の改善

3-1 スケジュール策定結果の評価

 当初予定通り、90日目に記者会見を実施し、工場での実動画面を公開できた。データ取得と通知機能は正常に稼働し、現場作業者からも「通知がシンプルで使いやすい」と評価された。想定されていたエラーも発生せず、説明資料との整合性も保たれていた。結果として、想定機能の稼働率は100%、レビュー回数は計9回、レビュー指摘の反映率は92%と高い水準であった。
 特筆すべきは、現場から「初めてPMが時間の使い方を本気で考えてくれた」との声が上がったことである。これは、会議方式の刷新や現場の裁量重視といった対応が、単なる効率化ではなく、信頼構築にも寄与したことを示していた。チームの一体感は明らかに高まり、翌月から他工場への横展開の準備もスムーズに進んだ。

3-2 スケジュール運用で得た教訓

 運用を通じて感じたのは、日程共有と合意形成の仕組みの重要性である。冒頭5分で課題確認を行う「スタートチェック」を導入し、進捗ずれや懸念を早期に表面化させたことが、日々の判断の基礎となった。また、仮想データでの事前確認により、開発側と現場側の認識差を早期に埋めることができた。

3-3 次回以降への改善提案

 今後は、初期計画段階での「リスクシナリオレビュー」制度を導入し、スケジュール上の重大制約を早期に洗い出したい。また、会議時間の短縮が奏功したため、次回は更に「非同期レビュー」(録画とコメントの活用)を取り入れ、移動や拘束の負担を軽減する。これにより、実作業時間をさらに確保できると考えている。
 このように稼働時期が厳格に定められた状況においても、段階的合意と並行化の工夫により、限られた時間内で信頼性の高い仕組みを構築することができた。
 以上

💡ワンポイント補足

 原作のフォッグ氏が80日という制限の中で各国の事情に応じ柔軟に行動したように、本論文でも“変えられない期日”を前提としたスケジュール構築が描かれている点が秀逸です。原作の旅が「段取り」と「即応性」の両立で成り立っていたように、論文でもレビュー専任者の配置や会議方式の見直しといった判断が、全体の整合性と機動性を高めています。時間制約下の柔軟な最適化という、原作の本質を見事にプロジェクトに投影した好例です。

🎓講評コメント(AI評価)

 これはね、プロジェクトマネージャとして「時間に支配される」のではなく、「時間を味方につける」ってことを実現した好例だよ。論文の冒頭から“90日”という制約が物語の重力になっていて、読者としても自然と緊張感が高まる。その中で、無理な詰め込みではなく、機能の優先順位付けと現場のリズムに合わせた柔軟な調整をやってのけた。これができるPMは、そうそういないよ。
 ビデオ会議の冒頭10分だけ参加してもらうアイディアなんか、実際の現場でもよくあるけど、それを「本当に大切なのは君たちの時間だ」と言って支えたところがいいんだ。このセリフがなければ、「会議改革」もただの効率化で終わってしまう。“人の不安”に言葉で向き合ったから、プロジェクトの信頼が生まれた。このPMは、仕組みを動かす前に、人の気持ちを動かしてるんだよ。
 1on1やレビュー専任者の設定、仮想データによるリハーサルも地味だけど重要な布石。それらが全部、最後の「稼働率100%」「レビュー反映率92%」につながってる。つまり、結果が、プロセスの妥当性を証明してる。これが論文としても強い。
 もしあえて注文をつけるなら、「このやり方を全社にどう広げるか」という視点がもう一段入ると、未来への展望としてさらに良かったかな。でもね、現場と向き合う姿勢、対話の言葉、成果への橋渡し――どれを取っても満点だよ。合格じゃない、優勝です。

📌補足

PM童話論文の読み方について(共通注記) ※クリックで開きます

🐇補足:この童話論文の読み方について(共通注記)

 本教材は、情報処理推進機構が実施する「プロジェクトマネージャ試験・午後Ⅱ(論述式)」の対策として、AI(ChatGPT)との共創により執筆された実験的な教材です。人間による構成・監修のもと、誰もが知る童話や寓話の世界観とPMスキルの融合を試みています。

🔎 ご留意いただきたい点

  • 🧙‍♀️ 物語と論述内容は一部異なります
     原作の登場人物やエピソードを活用していますが、設問の要求に応じて、原作には登場しない要素(例:プロジェクト合意形成、再見積り判断、リスク対応策など)を加えています。
  • 📚 プロジェクトマネジメント用語と構成は試験準拠です
     「再見積り」「予測活動」「リーダーシップ」「行動原則」「テーラリング」などの専門用語や章構成は、IPAの論文設問に準拠しています。童話内のセリフや出来事は、これらを支える比喩・象徴として用いています。
  • 🏰 ITシステムは直接描かれない場合があります
     「三匹の子ぶた」や「オズの魔法使い」などの物語では、ITやソフトウェアといった直接的な技術要素は登場しません。代わりに、プロジェクト構造(目的・合意・リスク・評価など)として描いています。
  • 🔔 実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません
     本教材は、実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません。試験学習の補助を目的とした知的演習であり、「童話のキャラクターを借りた架空のプロジェクト事例」としてご理解ください。

📣 執筆方法について

 本教材の論文は、AI(ChatGPT)を“執筆者”、筆者自身を“編集者”と見立てた共創スタイルで制作しています。AIはしばしば予想外の視点や表現を提示し、それが筆者にとって新たな気づきとなりました。この共創の姿勢そのものが、未来の学習と表現の可能性を広げる一助となると考えています。

🌱 本教材のねらい

  • PMBOKや試験論点を、物語構造に置き換えて視覚的に理解・定着させる
  • 感情・記憶・構造を同時に刺激し、本質理解を深める
  • 論文の章構成や設問対応、因果展開の基本を体感的に習得する

🍀 副次的な効能

  • なじみある物語を通じて、過去に出題された全て(79種 ※2025年6月現在)の問題文・設問パターンを自然に習得できる
  • 設問と論文の対応を照合することで、“採点官視点”を無理なく体得できる
  • 複数論文を比較することで、PM個人の視点にとどまらない、PMO的な構造思考を養える