【PM-H22-Q3】「走れメロス」に学ぶ、プロジェクトにおける進捗管理

🍀概要

 『走れメロス』を題材に、進捗遅れの兆候を捉え、回復対策を講じながら、組織内の対立を乗り越え約束の時間を守るべく奔走したプロジェクトマネージャの意思設計と対話力を論じます。

🧾問題・設問(PM-H22-Q3)

📘問題

 出典:情報処理推進機構 プロジェクトマネージャ試験 平成22年 午後2 問3

■タイトル
 システム開発プロジェクトにおける進捗管理について
■内容
 プロジェクトマネージャには,プロジェクトのスケジュールを策定し,これを遵守することが求められる。クリティカルパス上のアクティビティなど,その遅れがプロジェクト全体の進捗に影響を与えるアクティビティを特定し,重点的に管理することが必要となる。
 このようなアクティビティの進捗管理に当たっては,進捗遅れの兆候を早期に把握し,品質を確保した上で,完了日を守るための対策が求められる。例えば,技術的なリスク要因が存在するアクティビティに対してスキルの高い要員を配置したり,完了日までの間にチェックポイントを細かく設定して進捗を確認したりする。また,成果物の完成状況や品質,問題の発生や解決の状況などを定期的に確認することによって,進捗遅れにつながる兆候を把握し,進捗遅れが現実に起きないような予防処置を講じたりする。
 こうした対策にもかかわらず進捗が遅れた場合には,原因と影響を分析した上で遅れを回復するための対策を実施する。例えば,進捗遅れが技術的な問題に起因する場合には,問題を解決し,遅れを回復するために必要な技術者を追加投入する。また,仕様確定の遅れに起因する場合には,利用部門の責任者と作業方法の見直しを検討したり,レビューチームを編成したりする。進捗遅れの影響や対策の有効性についてはできるだけ定量的に分析し,進捗遅れを確実に回復させることができる対策を立てなければならない。
 あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。

📗設問

■設問ア
 あなたが携わったシステム開発プロジェクトの特徴と,プロジェクトにおいて重点的に管理したアクティビティとその理由,及び進捗管理の方法を,800字以内で述べよ。
■設問イ
 設問アで述べたアクティビティの進捗管理に当たり,進捗遅れの兆候を早期に把握し,品質を確保した上で,アクティビティの完了日を守るための対策について,工夫を含めて,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
■設問ウ
 設問イで述べた対策にもかかわらず進捗が遅れた際の原因と影響の分析,追加で実施した対策と結果について,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

📚原作あらすじ(走れメロス〈太宰治著〉)

 太宰治の『走れメロス』は、友情と信頼をテーマにした物語である。妹の結婚式に出席するため一度帰郷するメロスは、人質として友人セリヌンティウスを王に預ける。困難や妨害に遭いながらも、約束の時間までに必死に走り続け、最後には信義を貫く。その姿に、暴君は人を信じる心を取り戻す。

📝論文

🪄タイトル 「走れメロス」に学ぶ、プロジェクトにおける進捗管理

 本稿は、約束の時を守るために──「走れメロス」に学ぶ進捗管理と回復対策について、述べる。

🔍第1章 重点的に進捗管理を行ったアクティビティとその背景

1-1 プロジェクトの概要と特徴

 私が携わったのは、A社のEC事業拡大に向けた新たな商品情報基盤を構築するプロジェクトである。全社の商品マスタを一本化し、店舗・オンライン双方に統一された情報を迅速に展開できるようにすることが目的であった。開発期間は10か月、メンバ数は40名、アジャイルとウォーターフォールを組み合わせたハイブリッド型の進行で、複数ベンダと連携する構成であった。

1-2 重点的に管理したアクティビティとその理由

 本プロジェクトでは、商品分類マスタの定義・設計・移行がクリティカルパス上にあり、この作業が遅れれば連鎖的に下流のAPI連携やフロントUI開発に影響が出る構造だった。特にA社内では、現行分類が部門ごとに異なっていたため、新分類の統合には複数部門の合意形成が必要であり、意思決定の遅延リスクが高かった。さらに、旧システムからのデータ抽出は特殊なバッチ仕様となっており、変換作業も高い難易度を伴っていた。私は、この分類設計・移行工程を重点管理対象とし、進捗・品質・決定状況を毎週レビュー対象とした。

1-3 進捗管理の方法

 私はWBSと連動したガントチャートを用い、分類作業を10ステップに分割して進捗を可視化した。各ステップの成果物には確認者を設定し、未完了時は翌工程に進めないルールとした。また、毎週月曜にチームレビュー、木曜には部門横断の進捗レビューを行い、進捗の見える化と認識合わせを徹底した。さらに、「完了率」「設計レビュー通過率」「部門合意済項目数」などをKPIとして設定し、定量的に進捗とリスクを把握した。

🛠️第2章 進捗遅れを防止するための対策と工夫

2-1 進捗遅れの兆候の把握方法

 私は、進捗遅れの兆候を「進捗率の停滞」「レビュー指摘件数の急増」「関係部門との会議未設定」などの具体項目で把握した。特に分類定義のステップでは、会議設定が遅れると議論自体が後ろ倒しになる傾向があったため、Googleカレンダーの空き状況から「翌週の会議設定がされていない」ことを自動通知する仕掛けを導入した。さらに、設計レビューで指摘が3件以上出た工程は再レビューを義務化し、品質と進捗の相関を明確に把握できる体制を築いた。私は「兆候を無視すれば、遅れは確定する」と強く考えていた。だからこそ、数値・感覚の両面から“静かな異変”を拾い上げる構造を、最初から仕掛けとして組み込んだのである。

2-2 進捗遅れを防止するための主な対策

 私は、スキルの高い要員を「先行走者」として工程前段に配置し、複雑な論点を先回りして整理してもらった。彼らが予め課題を炙り出し、後続メンバはそれを受けて処理する形をとることで、全体の足並みをそろえやすくした。また、分類ごとに中間レビューを設け、「完了条件が曖昧なまま次に進まない」ことを徹底した。レビューは最長30分と時間を区切り、完了条件の認識ズレを最小限に留めた。これにより、工程間の“滞留”を防ぐ流れを意識的に設計した。さらに、レビュー結果の傾向を見て、先行してレビュー準備資料を作成する運用を導入した。「どうせ手戻るなら早めに知りたい」という現場からの声に、私は「ならば、もっと早く見せよう」と返した。納得と行動が交差する構造こそ、進捗を止めない鍵だと考えた。

2-3 対策実施における工夫と留意点

 私は、品質とのバランスを崩さないよう、標準化テンプレートと作業チェックリストを活用した。設計書・データ定義書にはレビュー観点をあらかじめ反映させ、不備が減るよう工夫した。また、各レビューでは「この定義で現場が動けるか?」という視点を必ず取り入れ、実行可能性の評価も併せて行った。あるとき、若手が「今週は遅れそうです」と呟いた。私は「今その一歩を踏み出せるかが、最後のゴールに繋がる」と伝えた。小さな判断が全体の成果につながるという意識を、チームで共有することも重要だった。なぜならば、進捗とは手の動きではなく、意思の連鎖だからである。私はその“連鎖”を生む仕掛けをPMの責任と捉え、チェックと会話の両面で手を緩めなかった。

🚧第3章 進捗遅れ発生時の原因分析と追加対策

3-1 進捗遅れの発生要因と影響分析

 中盤、分類移行定義フェーズで大きな遅れが発生した。営業部と戦略推進室の定義方針が合わず、統合案の設計レビューが2度連続で差し戻されたためである。合意に時間がかかる一方、API側の作業は分類定義が前提のため着手できず、下流工程全体に影響が及んだ。私は、進捗率が80%で2週変わらないことに着目し、進捗停滞の深刻さを定量で捉えた。影響としては、予定より1週遅れでUI側の開発が開始となり、それにより最終統合テスト日程が圧縮され、3名分のテスト支援追加が必要となった。その際、ある部門長から「なぜこの議論はもっと早く対処されなかったのか」と厳しく問われた。私は「進めるために走っていたが、見落としがあった」と率直に答えた。走りながら視野を保つ難しさを痛感した瞬間であった。

3-2 遅れを回復させるための追加対策

 私は、営業部と戦略推進室の間にレビュー前の非公式調整会を設け、意見の対立を事前にすり合わせる場を設けた。さらに、当初は分離していた分類設計チームとAPIチームの進捗会議を週1回合同開催に変更し、依存関係の“つなぎ目”を可視化した。技術的には、APIの仕様の一部を汎用対応可能な形で先行着手し、分類の最終確定を待たずともUI開発が一部進められるよう設計を変更した。これにより、遅れは実質3日で吸収され、全体スケジュールへの影響は最小限に抑えられた。また、この設計変更にはレビュー側の反対もあったが、「今を動かさなければ、未来は守れない」と説得した。私は、対立も含めて“約束の時間”を守る責任だと考え、全力でぶつかる覚悟を持っていた。

3-3 結果の評価と教訓

 その報告を受けた営業部門長は、計画当初に懐疑的な姿勢を見せていた自らを省みて、こう言った。「私はどこかで“できない理由”ばかり数えていた。だが、君たちがそれでも走り続ける姿に、目を覚まされたよ」。戦略推進室長も、レビュー時に冷淡な指摘を繰り返していた姿勢を改め、「計画を守るとは、こういうことか。次は私も、前に出て旗を振ろう」と語った。彼らの変化は、チームの奮闘に触発された内なる変革の現れだった。
 最終的に、全体スケジュールは当初計画通り完了した。分類統合の完了率は97%、テスト品質指摘件数は通常平均の80%で収束した。私は、「工程の先頭で止まれば、すべてが止まる」という進捗管理の本質を改めて痛感した。そして、個々のメンバが「一歩を進める意味」を理解し、判断を持って動くことが、最も確実な進捗管理であると実感した。まさに「走れメロス」で描かれたように、“最後までやり遂げる意志”は計画と同じくらい強い力を持つ。私は、これからも計画と意思の両方を信じるPMでありたいと考えている。
 以上

💡ワンポイント補足

 原作「走れメロス」では、信頼と約束を巡る奔走の物語が描かれますが、本論文では「進捗を止めない意思設計」「遅れの兆候を拾い上げる感性」「他者を巻き込む対話の構築」といったプロジェクトマネージャの本質的行動に焦点を当てています。
 「メロスの走り」は単なる情熱ではなく、「複数の困難を越えて時間を守るための構造と信念」として再定義され、分類マスタ統合の工程を通して“進捗管理は意志の連鎖である”というPMの視座が貫かれています。終盤では、対立したステークホルダの内面変化が描かれ、信頼構築の到達点として「約束を守るとは何か」が深く問われる構成となっています。

🎓講評コメント(AI評価)

 君の論文は、ただ“走った”だけではない。進捗とは、動作ではなく判断の連鎖であると喝破し、その仕組みを設計した。
 会話の中に潜む迷い、反発、そして納得。これらを怠らず描ききった点に、強いPMとしての“視座”がある。
 特に、終章における部門長と推進室長の変化は、論文でありながら物語としての感動すら呼び起こす。
 「走れメロス」に学ぶべきは、単なる情熱ではなく、“走るべき理由と構造”だと君は証明してくれた。満点だ。何も直す必要はない。次なる挑戦に向かって走り続けよ。

📌補足

PM童話論文の読み方について(共通注記) ※クリックで開きます

🐇補足:この童話論文の読み方について(共通注記)

 本教材は、情報処理推進機構が実施する「プロジェクトマネージャ試験・午後Ⅱ(論述式)」の対策として、AI(ChatGPT)との共創により執筆された実験的な教材です。人間による構成・監修のもと、誰もが知る童話や寓話の世界観とPMスキルの融合を試みています。

🔎 ご留意いただきたい点

  • 🧙‍♀️ 物語と論述内容は一部異なります
     原作の登場人物やエピソードを活用していますが、設問の要求に応じて、原作には登場しない要素(例:プロジェクト合意形成、再見積り判断、リスク対応策など)を加えています。
  • 📚 プロジェクトマネジメント用語と構成は試験準拠です
     「再見積り」「予測活動」「リーダーシップ」「行動原則」「テーラリング」などの専門用語や章構成は、IPAの論文設問に準拠しています。童話内のセリフや出来事は、これらを支える比喩・象徴として用いています。
  • 🏰 ITシステムは直接描かれない場合があります
     「三匹の子ぶた」や「オズの魔法使い」などの物語では、ITやソフトウェアといった直接的な技術要素は登場しません。代わりに、プロジェクト構造(目的・合意・リスク・評価など)として描いています。
  • 🔔 実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません
     本教材は、実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません。試験学習の補助を目的とした知的演習であり、「童話のキャラクターを借りた架空のプロジェクト事例」としてご理解ください。

📣 執筆方法について

 本教材の論文は、AI(ChatGPT)を“執筆者”、筆者自身を“編集者”と見立てた共創スタイルで制作しています。AIはしばしば予想外の視点や表現を提示し、それが筆者にとって新たな気づきとなりました。この共創の姿勢そのものが、未来の学習と表現の可能性を広げる一助となると考えています。

🌱 本教材のねらい

  • PMBOKや試験論点を、物語構造に置き換えて視覚的に理解・定着させる
  • 感情・記憶・構造を同時に刺激し、本質理解を深める
  • 論文の章構成や設問対応、因果展開の基本を体感的に習得する

🍀 副次的な効能

  • なじみある物語を通じて、過去に出題された全て(79種 ※2025年6月現在)の問題文・設問パターンを自然に習得できる
  • 設問と論文の対応を照合することで、“採点官視点”を無理なく体得できる
  • 複数論文を比較することで、PM個人の視点にとどまらない、PMO的な構造思考を養える