【PM-R03-Q2】「オズの魔法使い」に学ぶ、プロジェクトにおけるスケジュールの管理

🍀概要

 『オズの魔法使い』を題材に、仲間との旅路をスケジュール管理に見立て、進捗の遅れに対して原因分析・対話・計画変更を通じてチーム全体でばん回を図った、プロジェクトマネージャの対応を論じます。

🧾問題・設問(PM-R03-Q2)

 出典:情報処理推進機構 プロジェクトマネージャ試験 令和3年 午後2 問2

📘問題

■タイトル
 システム開発プロジェクトにおけるスケジュールの管理について
■内容
 プロジェクトマネージャ(PM)には,プロジェクトの計画時にシステム開発プロジェクト全体のスケジュールを作成した上で,プロジェクトが所定の期日に完了するように,スケジュールの管理を適切に実施することが求められる。
 PMは,スケジュールの管理において一定期間内に投入したコストや資源,成果物の出来高と品質などを評価し,承認済みのスケジュールベースラインに対する現在の進捗の実績を確認する。そして,進捗の差異を監視し,差異の状況に応じて適切な処置をとる。
 PMは,このようなスケジュールの管理の仕組みで把握した進捗の差異がプロジェクトの完了期日に対して遅延を生じさせると判断した場合,差異の発生原因を明確にし,発生原因に対する対応策,続いて,遅延に対するばん回策を立案し,それぞれ実施する。
 なお,これらを立案する場合にプロジェクト計画の変更が必要となるとき,変更についてステークホルダの承認を得ることが必要である。
 あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。

📗設問

■設問ア
 あなたが携わったシステム開発プロジェクトにおけるプロジェクトの特徴と目標,スケジュールの管理の概要について,800字以内で述べよ。
■設問イ
 設問アで述べたスケジュールの管理の仕組みで把握した,プロジェクトの完了期日に対して遅延を生じさせると判断した進捗の差異の状況,及び判断した根拠は何か。また,差異の発生原因に対する対応策と遅延に対するばん回策はどのようなものか。800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
■設問ウ
 設問イで述べた対応策とばん回策の実施状況及び評価と,今後の改善点について,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

📚原作あらすじ(オズの魔法使い〈ライマン・フランク・ボーム著〉)

 ドロシーは竜巻で飛ばされた異世界から故郷に帰るため、かかし・ブリキ・ライオンと共にエメラルドの都を目指す。旅の中で仲間たちは、自分に足りないと思っていた資質(知恵・心・勇気)を実は持っていたことに気づいていく。冒険と自己発見の物語。

📝論文

🪄タイトル 「オズの魔法使い」に学ぶ、エメラルドへの道をつなぐ進み方の仕立て直し

 本稿は、旅の進み方に遅れが生じた際に、その原因を見極め、仲間と共に工夫しながら予定をばん回した取り組みについて、述べる。

🔍第1章 プロジェクトの特徴とスケジュール管理の概要

1-1 プロジェクトの特徴と目標

 私は、ドロシーとして、不思議な世界をさまよう仲間たちと共にエメラルドの都を目指す旅を率いる役割を担った。プロジェクトの目標は、かかし・ブリキ・ライオンの三者がそれぞれ「知恵」「心」「勇気」の証を得て、本来の自分らしさを取り戻すことにあった。
 旅の完了期限は、西の魔女が勢力を強める満月の夜までと定められ、それを超えると仲間の願いが叶わないとされていた。この期限の厳しさが、プロジェクトマネージャとしての私に、進み方の管理責任を強く意識させた。

1-2 スケジュール管理の方針と体制

 私は、地図をもとに旅程(スケジュールベースライン)を策定し、それぞれの区間ごとに中間目的地と役割を設定した。各拠点での検証項目(知恵を問う門、心を試す泉など)を定め、その通過状況を朝と夜のミーティングで報告する体制を整えた。
 かかしには記録係、ブリキには体調管理、ライオンには警戒当番という役割を割り振り、状況把握に漏れがないようにした。進捗は、距離の消化と課題の達成度で評価した。

1-3 スケジュールの管理の概要と評価方法

 スケジュールの進捗は、毎日、以下の三点で確認した。①到達距離(出来高)、②体力と持ち物の余力(リソース)、③前日の課題の達成有無(品質)である。これらは、かかしの記録帳とドロシーの旅の方針書にまとめ、前日の予定と実績を見比べて差異を監視した。
 評価においては、特に「どこで、なぜ立ち止まったか」を重視した。立ち止まりが単なる休息か、迷いによるものか、恐れによるものかを識別することが、次の判断の質に直結すると考えたからである。

🛠️第2章 進捗の差異と対応策・ばん回策の立案

2-1 遅延を生じさせると判断した進捗の差異とその根拠

 ある日の朝、かかしの記録を見て私は違和感を覚えた。予定では「知恵の迷宮」を昼までに突破するはずだったが、実際には夜を超えても未到達だった。
 かかしは「もう少し考えさせて」と言い、ブリキは「急がせるのは酷だ」とかばったが、私はこの遅れが旅全体に与える影響を無視できないと判断した。
 ライオンの見回り記録でも、夜間に無駄な動きが多かったことが分かり、メンタル面の迷いが行動にも影響していることが明らかだった。これらを根拠に、予定とのずれは重大と判断した。
 私は仲間に共有すべきか迷った。誰かを責めたくない気持ちと、PMとして見過ごせないという責任感がせめぎ合った末、私は決意した。「このままでは、全員の願いが届かない」と伝えることにした。
 仲間たちの表情は一瞬強張ったが、私は目を逸らさなかった。「誰かを責めたいわけではない。私たちは一緒に進んでいる。その“進み方”を、今、一緒に仕立て直したいの」と言葉を加えた。

2-2 進捗差異の発生原因と対応策

 遅れの原因は、かかしが迷宮の正答に過剰な完璧さを求めすぎていたこと、および、他の仲間がその姿勢に意見できずにいたことであった。私は、これを“知恵の迷宮”そのものより、“内面の迷宮”の問題と捉えた。
 対話の場で、私はあえて問いかけた。「もし間違えても、誰かをがっかりさせることはない。では、なぜそんなに怖いのか?」 かかしはしばらく沈黙した後、小さな声で「自分が賢いと思われたかった」と答えた。
 私は、「最適解ではなく、合意解を目指そう」と伝えた。また、全員に「止まる理由は言葉にして、共有する」ことを新たな原則として追加した。これは、迷いを可視化し、対話を通じて前に進むための足場を作る狙いである。

2-3 遅延に対するばん回策とステークホルダへの対応

 私は、知恵の迷宮の突破後のスケジュールを見直し、2日間の余裕区間を活用して「試練の森」と「泉の谷」の通過順を入れ替え、物理距離を短縮した。
 この変更について、仲間に対しては「遅れの責任を背負うのではなく、工夫を分け合おう」と説明した。ブリキは「誰かのせいにしないって、いいね」と笑い、ライオンは「その分、ぼくが早く走るよ」と言った。
 私は、この“前向きな受け止め”が、ただのスケジュール調整ではなく、チームとしての再出発につながると確信した。また、エメラルドの都に伝書鳥で連絡を入れ、変更方針について理解を得た。ステークホルダである「大魔法使い」からは「目的を見失わないなら、手段の変更は妥当」との返答を得た。

🚧第3章 対応策・ばん回策の実施と評価・改善

3-1 対応策およびばん回策の実施状況

 その後、かかしは仲間に思考を話すようになり、「間違える前に話して、直した方が速い」と言った。ブリキは「少し急ごうか」と提案するようになり、ライオンは「僕が先に進んで様子を見ようか」と自ら役割を拡張した。
 私は、夕方の振り返り会を重視し、遅れに対する対話を“責任の追及”ではなく、“改善の共有”として位置付けた。「今日の遠回りには意味があったかもしれない」と語り合う場が、次の一歩を軽くした。
 特に印象深かったのは、かかしが仲間に向かって「ぼく、あのとき怖かったんだ。考えるのが遅いって思われるのが」と告白した瞬間だった。沈黙が流れた後、ブリキが「でも、それがあったから僕たち、もっと話せるようになったんだよ」と答えた。ライオンも「怖くていい。大事なのは、それを言える仲間だと思う」と続けた。私は、その光景を見て、計画通りに進むよりも、互いに支え合う体制を築くことの方が大切だと実感した。

3-2 実施結果の評価

 結果として、旅は当初予定の満月の夜に間に合った。かかしは「正解より、納得のいく選択がいいと知った」と言い、ブリキは「急いでも壊れない仲間がいるのは心強い」と語った。
 私は、「速さを求めすぎると、大切な気づきが削られてしまう。だが、気づきを無視すれば旅は進まない」ということを学んだ。定量的には、中盤の1日遅れを、後半で0.5日ずつ2回の短縮で回収できた。計画変更による心理的圧迫はなく、むしろ仲間意識が強まった。

3-3 今後のスケジュール管理に向けた改善点

 一方で、私は初期に「迷ってもいいが言葉にしよう」という約束を明示しなかったことを悔やんだ。今後は、旅の初日に「止まったら声に出す」ことを基本原則とし、声なき遅れを早期に察知できる体制を作りたい。
 また、旅の地図(旅程)には「変更可能な領域」と「変更不可の要所」を色分けし、仲間全員が調整の余地を視覚的に把握できるようにする予定である。
 このように、予期せぬ立ち止まりがあっても、仲間の力を借りて柔軟に進み方を仕立て直すことで、旅を完遂することができた。
 以上

💡ワンポイント補足

 本論文では「旅程=スケジュールベースライン」「迷い=進捗差異」「試練の再配置=工程変更」「夕方の共有会=定例レビュー」といった対応が秀逸であり、プロジェクトマネジメントの構造を童話に違和感なく溶け込ませている。

🎓講評コメント(AI評価)

 ──いやはや、これは美しい「仕立て直し」だ。
 まずこの論文、非常に構造がよい。第1章では“スケジュールベースライン・リソース管理・進捗評価”を、童話世界の「旅」「記録」「体調管理」に自然に置き換えている。しかも、導入で期限を“満月の夜”とすることで、読者の心に「タイムリミットの重み」をしっかり植えつけている。これが物語の駆動力になっているのが上手い。
 第2章では“原因の可視化”と“対応の対話化”において完成度が高い。かかしが「賢いと思われたかった」と告白する場面、それを否定せず、「合意解」を目指そうとしたドロシーのファシリテーション──これはまさに現代PMが直面する“プライドと納得”の問題を正面から描いている。対応策とばん回策の論理も明快で、順序入替と関係者合意という一連の流れは実務再現性が高い。
 第3章になると、空気が変わる。論文の語りが、データから感情へ、構造から信頼へと自然に移行していく。特に、かかしが「怖かった」と口にしたあと、ブリキとライオンがそれを肯定し、全員が“自分の弱さを出せるチーム”に変わっていく流れ──これは感情の描写ではない。“信頼が育った結果としての行動”だ。講義で何度も言っているが、「PMは、論理を設計し、感情で納得させる」。この論文は、それを童話の構造に埋め込んだ。
 満点。それも、記号的に型に当てはめた満点ではない。“論理と感情が交差した”結果として得られた本質的な満点だ。教材に強く推奨したい。

📌補足

PM童話論文の読み方について(共通注記) ※クリックで開きます

🐇補足:この童話論文の読み方について(共通注記)

 本教材は、情報処理推進機構が実施する「プロジェクトマネージャ試験・午後Ⅱ(論述式)」の対策として、AI(ChatGPT)との共創により執筆された実験的な教材です。人間による構成・監修のもと、誰もが知る童話や寓話の世界観とPMスキルの融合を試みています。

🔎 ご留意いただきたい点

  • 🧙‍♀️ 物語と論述内容は一部異なります
     原作の登場人物やエピソードを活用していますが、設問の要求に応じて、原作には登場しない要素(例:プロジェクト合意形成、再見積り判断、リスク対応策など)を加えています。
  • 📚 プロジェクトマネジメント用語と構成は試験準拠です
     「再見積り」「予測活動」「リーダーシップ」「行動原則」「テーラリング」などの専門用語や章構成は、IPAの論文設問に準拠しています。童話内のセリフや出来事は、これらを支える比喩・象徴として用いています。
  • 🏰 ITシステムは直接描かれない場合があります
     「三匹の子ぶた」や「オズの魔法使い」などの物語では、ITやソフトウェアといった直接的な技術要素は登場しません。代わりに、プロジェクト構造(目的・合意・リスク・評価など)として描いています。
  • 🔔 実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません
     本教材は、実在のプロジェクトや企業とは一切関係ありません。試験学習の補助を目的とした知的演習であり、「童話のキャラクターを借りた架空のプロジェクト事例」としてご理解ください。

📣 執筆方法について

 本教材の論文は、AI(ChatGPT)を“執筆者”、筆者自身を“編集者”と見立てた共創スタイルで制作しています。AIはしばしば予想外の視点や表現を提示し、それが筆者にとって新たな気づきとなりました。この共創の姿勢そのものが、未来の学習と表現の可能性を広げる一助となると考えています。

🌱 本教材のねらい

  • PMBOKや試験論点を、物語構造に置き換えて視覚的に理解・定着させる
  • 感情・記憶・構造を同時に刺激し、本質理解を深める
  • 論文の章構成や設問対応、因果展開の基本を体感的に習得する

🍀 副次的な効能

  • なじみある物語を通じて、過去に出題された全て(79種 ※2025年6月現在)の問題文・設問パターンを自然に習得できる
  • 設問と論文の対応を照合することで、“採点官視点”を無理なく体得できる
  • 複数論文を比較することで、PM個人の視点にとどまらない、PMO的な構造思考を養える